白い鬼が生まれた


始まりは白い世界だった。
どこまでも広がる空間を見上げているのだと理解して瞬く。
いや、瞬くという行為さえ分かっていない。
白を反射する真っ黒な虚に、黒い影が細くうごめいた。

「?」

影はうねる様に上から下、周囲を何度もグルグル回り続ける。
真っ白な世界を細く伸びる黒が浮かび上がって不思議な感覚だ。
目で追うのも本能に近い。
瞬くと、それはやがて目の前で止まった。
先端が持ち上がり、鎌首を傾げるように深紅の双眸を輝かせる。
手を伸ばして触れたのも、反射だ。

「!」

伸ばした指を中で動かして瞬く。
そうして、影が鎌首を傾けるのを真似して首を動かした。
傾げるという行為なのだと知る。
影の中の掌は感覚が無い。
何か空気を震わす音が頭に響いた。
それが声だとは分からない。
開いている掌を握る。

黒が弾け飛んで世界を染めた。
墨が飛び散るように散った黒は、白にぼやけて消えていく。
霞んでいく世界を眺めながら、口を意識して空気を震わせた。

「ツケ、クラオカミ」