物好きの新しい玩具


鈍色の高いものが形を崩している。
吹き抜ける空気の振動が顔にかかる髪を揺らせた。
上に向けていた視線を下へ落とす。
鈍色に混じって、真っ赤な何かがあちこちに飛び散っており、白い布をつけるモノと黒い布をつけるモノがバラバラに転がっていた。
真っ赤な液を溢れさせて鼻をつく臭いを漂わせるモノから視線を外した。
見る理由を失ったからだ。
立ち上がり、握り締めている重みがズルズルと地に細い跡をつける。
身の丈に合わないものであっても、重いという感覚を知らない。

ただ当てもなく足を歩ませた。
途中で踏んづけた赤い液体がビシャリと足を濡らす。
止まった原因は別にあって、首を向けた。
灰色の山からいくつかの音がする。
姿を現した白いモノたちは、先ほど転がっていたモノとは違って動いており、音を発していた。
何やら高く空気を震わせ、地を蹴り高く舞い落ちてくる。
白いモノが握っている鋭い反射が輝いて見えた。

「クラオカミ」
「!馬鹿なっ!?ッぐがぁは」

音を震わせて動いた身が力を失う。
一気に重みの痛みを受けても気にせず、赤い液を撒き散らして落ちた白いモノを見た。
裂け目から深紅がとめどなく流れ、痙攣して見上げてくる瞳も同じ色をしている。

「人間のガキごと、きッに、わ、が、」

そうして動かなくなるモノを見つめたままでいる。
コレは動いていたのに、赤が溢れ過ぎると動かなくなるらしい。
真新しいものから尽きない興味のままに動かないでいた。
だが、その意思とは関係なく手が動く。
頭の上でぶつかり合う音に視線を向けた。

輝く刃越しに、白いモノが音を立てた。

「あっは!一体、君は何なんだい」
「?」
「ひょっとして分かってない?うそっ、待ってコレは大発見じゃないか!」
「?」
「綺麗な目もしてるね〜。真っ暗な闇だ」

刃は引かれたが、代わりに次々と音を発する白いモノの動きが理解できない。
後ろで他の白いモノたちが騒いで寄ってくる。
けれども、この白は動きを変えなかった。
差し伸べられたのは知っている、これは掌。

「僕と一緒においで、迷子ちゃん」

真似して伸ばした手が先に重ねられた。