「やっぱり世界中を飛びまわろうと思う」


最初に言っておきます。
わたしは馬鹿ではありません。一緒に休憩していた同僚が飽きれた眼差しでわたしを見てるけど、わたしは至って本気であって今日だって覚悟を見せようと退職願いまで持ってきている。今の現状に大いに不満を感じているのだ。

わたしは、アルバイトでなんとか毎日を食い繋いでいる。本職は遺跡発掘調査員。でも滅多にその仕事に取りかかれないので、今やアルバイトがメインになってしまっている。これではフリーターだ。
遺跡発掘の仕事がないわけではない。ただ、ぴょんぴょん飛び回れるようなお金を持ってるわけでもない。故に飛行船代をこうやってアルバイトでコツコツ貯めて、それからやっと本職に行けるのだ。

こんな生活をここ数年続けていたけれど、もうやめよう…。アルバイト、楽しいよ。でもわたしがやりたいのは遺跡発掘、お金を気にせず世界中を飛び回って発掘作業に没頭したい!

そう決めてからが早かった。



「ハンター試験に申し込みして明日から試験なの」

「え!ハナコがハンター試験?!」

「やめなよ…!あの試験っていっぱい死人が出るって聞いたよっ。って何でそんな急に…!」

「いつまでもここだけで働いてたって、前にすすめないじゃない。ハンター試験に合格するとライセンスがあるだけで、どこだって行けるって知って…ね」

「、そっか…。そしたら此処も辞めちゃうんだ。寂しいなぁ」

「死なずに戻ってきたらまた一緒に働こうねっ」

「ちょちょちょ、試験に落ちる前提での話は辞めてよ!まだ受けてもないんだから」

「でもさ、あれって毎回会場変わるんだよね?ハナコは案外、会場に辿り着かず終わっちゃったり…!」


「ハナコならありえるかも〜!」と大笑いし出した同僚。わたしってドジっ子に見えてるのかな…。自分ではしっかりしてると思うんだけど…。

ふ、と時計を見るとそろそろ休憩時間が終わる。
テーブルの上の飲み物を飲み干して席を立った。もうこの際、同僚を無視して仕事に戻ろうとした時だった。


「ねぇ!今年の試験、どこでやるの?」

「ここ」

「え?」

「この下」


(只今、めしどころ ごはん にてバイト中)


そして「うっそだー!キャハハ」と大笑いされたのだ。
 



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