行き着いた先には目を疑う光景が広がっていた。
こんな状況に出会ってしまった自分を一瞬、悔いてしまった…が、そんなこと「やらなければ後悔すること」を考えたら吹き飛んでいた。トランプを振りかざしながら楽しげに受験者を殺しにかかるピエロ男。その前に鉄扇で男のトランプを受けるわたし。(嗚呼、死ぬかもしれない。でも、それも良いかもしれない。)ピエロ男を睨むとピエロ男はニヤリと笑いわたしを跳ね飛ばす。半端ない殺気に押されるも、しっかりと自分の武器、鉄扇を構えて応戦体制をとる。
後ろでそれを見ている3人の気配を感じ、咄嗟に「早く逃げて!」そう叫んだ。それを合図に3人はそれぞれバラバラに駆けだした。それを見て、安堵したけれどこの状況は悪い。死臭…血の臭いが鼻につく。
「きみ、さっきのもそうだけどなんなんだい?」
男はトランプを下げた。
「、ただの受験生ではダメですか?」
「ただの、ねぇ◆」
また、口元に笑みを浮かべてわたしを見遣った。だから、わたしは構えを解かず突然の攻撃に備えた。
その時、「う…」と呻き声が聞こえ隙を見計らって声を発した人のところへと向かうと微かながらに生きている男がいた。
「た、たすけ…」
「喋らないで、大丈夫…今、手当てしてあげるから」
「う…っ」
「(わたしにしかできないこと…)」
これは呪いだ。
傷口に触れるとじわじわと塞がり始めた。
この人はもう大丈夫。そう思った。後ろを振り返ればピエロ男が面白そうにわたしを見ている。くっくっくと喉から面白い獲物を見つけたように…。自分の表情が一変したのがわかる。安堵し緩んでいた顔の筋肉が一気に強張ったのだ。
鉄扇を取り出し構える。
「良い能力だねぇ◆念能力かい?」
「あなたに関係ない」
「関係あるさ、君のそのオーラ…いぃねぇ」
「なら戦って、わたしを殺しにきますか?」
「うーん◆今はしないよ」
「‘今は’?いずれ、があるわけですか…。でも、これだけは言っておきます」
ピエロ男の目はわたしを捉えている。それに従いわたしも目を彼に向けた。
「わたしは何があっても死なない」
わたしはゆっくりと立ち上がりまた鉄扇をしまった。
お互い、互いに対する戦意はもうないと判断した結果だ。現に彼は彼の武器ともいえるトランプを手にしていなかった。「それって、どういう意味だい?」と問われたが、それ以上は言わず黙っていた。
足元に未だ起き上がらない男の状態を目で確認する。直に起き上がるであろうと確信できた。そして、このまま黙って立ち去ろうとしたときだった。
逃げたはずの3人の内の1人が戻ってきたのだ。手には棒を持ち「女に助けられるなんざ、恰好が悪いってんだ!」と…。そして脱兎し、ピエロ男に殴りかかって行った。
(今度はあの男の人が危ないっ)
わたしも駆けだしたが少し遅かった。ピエロ男が殴りかかってきた男に手をかけようとしたとき、ピエロ男の顔面に何かが当たった。
「ゴン、くん…?!」
そう、現れたのはゴンくんだった。
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