──イザナ騒動
S62や鶴蝶でさえ全容を知らない事件である。
あらすじを簡単に説明しよう、
黒川イザナと一虎の姉ちゃんによる、ヤンキー特有の絶交()騒動だ。
「本当にすみませんでした」
「おーおー、そんな土下座なんて」
「いや、ホントまじ周り見えてなかったです。すみません」
「この通り完治したから気にすんな〜?」
菓子折を持ってS.Sモータースのコンクリの床に頭を擦り付けて謝罪するのは少年院を昨日退院した一虎の姉ちゃんである。
本当は出た直後に来ようとしたのだが、事前に確認を取ったところ定休日という事で翌日に訪れた。
「どら焼きかぁ、弟が喜ぶ」
「よかったです」
ちなみに渡したどら焼きは"うさぎや"の15個入である。
「その……バイクもメンテしてもらったみたいで……」
「あぁ、ウチのが擦ったらしいから気にすんな?」
「マジありがとうございます
……そんじゃ長居すンのもアレなんで、そろそろ帰ります」
「コレありがとな?大事に食べる」
「味はウマいはずなんで……あっ、そうだ、」
「?」
「佐野サン、黒川って知ってます?黒川イザナ」
「……………あぁ、知ってる」
「あ、やっぱし?アイツ院でずっと佐野サンの話ばっかしててさ〜、…兄ちゃんなんスよね?」
「そうだな」
「……手紙とか出さないン?」
「……………最近は、出してねぇな」
「フーン、そーなんだ、……じゃあお邪魔しました」
「おー、また来てくれな!」
自分が一虎にほぼ毎日貰っていた手紙を横で羨ましそうに眺めているイザナを知っていたから、なんとなーくそれとなーく、聞いてやった。
真一郎は元々あまり表情が変わらないし目も死んでるのでわかりやすいわけではなかったが…………、あんまし他所の家庭のアレソレに突っ込まん方がええなと思った一虎の姉ちゃんはややこしい話を聞く前に退散した。
寂しそうな様子を知ってて無視るのは後味が悪い気がしただけなんで。別によその家庭の絆修復系の慈善活動やってないんで。優しさは菩薩にでも求めてどうぞ。
この後女子会が燃え、パイセンのカレシがアウディからベンツに変わり、一虎の姉ちゃんは受験生になった。そのため、本業である一虎の頬っぺ捏ね職人に勤しみつつそれなりに勉強し時間を潰していた。
修学旅行をブッチした5月のはじめ、イザナから回ってきた絵しりとりに「出る。一週間後。」とだけ書かれてあった。日本語不自由かお前は。単語じゃねぇか。
先に出ていたムーチョに連絡を取り、他のS62を集めて迎えに行くことになった。わざわざ出るって報告されたので、みんなで「寂しいンかな…?」「迎えに来いってことか?」という結論に至った。
佐野サンも誘おうかなと思ってS.Sモータースに向かったが、店の前まで来て前回の微妙な空気を思い出したから引き返した。
いつもの如く絵しりとりを投函し、次に向かった先はイザナの孤児院。…会ったことは一回もないが絵がそんな上手くないことだけは知ってる5コ下のガキに面会に行ったのである。
イザナの下僕だとか言うそのガキは鶴蝶って名前らしい。
なんだ下僕って、オマエ女王様にでもなりたいンか?歌舞伎町の知り合いの店で働くか?つったら取っ組み合いの喧嘩になった。容赦なく髪の毛引っ張られてちぎれるかと思った。……思い出したらイライラしてきたな…オマエなんか一生出て来んなハゲ。
道中の電柱をヤンキー蹴りしつつやっとこさ孤児院に着いたので、受付の人に頼んで鶴蝶を呼んでもらう。
数分後、ヴォルデモートがだいぶ頑張った世界線のハリーポッターが出てきた。
一虎と変わんねぇ歳のガキだから、姉ちゃんはちょっと心がキュッ…てなった。
「誰だっ!!」
「ドーモはじめまして、絵しりとりの、」
「!?なんでオレが絵しりとりやってる事知ってるんだ…!?」
「ハ?いやだってアタシも描いて回してっし…」
「!?!!?……イザナだけだと思ってたぁ…」
「アイツなんも説明してねーのかよ!!つかオマエも間飛んだらわかんだろ!🍎描いた次に⏰来たらおかしいな…?ってなるだろーが!!」
「いやだってイザナだし……」
なんだと思われてんだテメェは、しっかりしろや。
「ンあー、ソォ、、じゃあマァ、…あの、変質者みたいでモーシワケないンだけど、」
「?変質者じゃないのか?」
「ァア"?誰が変質者じゃ潰すぞガキ…」
「!!…今ので安心した、イザナの友達だって信じる」
「だからアイツなんだと思われてんだよ」
「?暴君」
「それはそう。……でー、一週間後アイツ出て来ンじゃん?オマエも一緒に迎え行かね?他の絵しりとりのメンバーもみんな行くんだけどよ〜」
「!!オマエ以外にも絵しりとり混ざってたヤツが居るのか…!?」
「デケェのが1.2.......5人」
「!!………群れるのは嫌いだ…!」
「ァン?人見知りかよ〜いい歳だろオマエ」
「人見知りじゃねぇよっ!」
「じゃあ来ンだろ?来週門の前で待っとくから」
「オマエらとは行かねぇもん!!」
「逃げんなよチビ、じゃあナーーー」
「〜〜〜〜"!!!!」
約束を円満()に取り付けたところで帰宅。電柱蹴った右足のスネに青アザが浮いて切れてて、帰ったら一虎に泣きながら包帯を巻かれた。遊びに来ていた場地は引いていた。そんなもん唾つけときゃ治んだろ。
一週間後
少年院前
「……!!元気だったか!?」
「テメェ手紙出しすぎ、ウルセェ」
「どストレートか???」
「情緒とか恥じらいとかロマンとか乙女心をバイクで轢いちまったんだろうな……」
「ヒンwwwwwww」
「オマエ竜胆よくこんな兄貴にくっついてンな…」
「届いてンなら返事しろよぉ"っ…!!」
「忙しいンだよ(シッシッ)」
「いやオマエ学校サボってほっつき歩いてんの見たぞ……」
「つかメール交換すりゃ良くね?」
「余計なこと言ってんじゃねーよ」
「余計とか言われてんじゃん竜胆wwww」
「さっさとこんな兄貴と縁切れ竜胆」
「…………」
「おーい、隠れれてねーゾ」
「アイツが鶴蝶か?」
「ちっさ、何歳??」
「小5だつってなかった?」
「下僕だろ?」
「イザナのな?あんま調子乗んなよ、またお前吹っ飛ばされて白目むかされるぞ」
「………そこに居たら危ないから、…こっちにこい」
「ムーチョやっさし〜〜」
「図体デカすぎてカツアゲにしか見えねぇだろ」
「オマエもそんな変わんねぇぞ」
「眉毛がダメ」
「ァアン!?」
「あ?なんでテメェらこんなトコ居ンだよ」
「!!…イザナ!」
「鶴蝶!?オマエまで…」←満更でもない
「ハァアアア〜〜??寂しん坊の誰かがわざわざ絵しりとりに「出る」とか書いて送ってきたから迎えに来てやったんだろーが」
「は?頼んでねーし、……つか誰が寂しん坊だコラ…」
「はいはい落ち着け」
「肉食いに行くから喧嘩やめろー?」
「何?灰谷蘭の奢り?」
「フルネームかよ」
「2人とも灰谷だからややこしいだろ」
「……オレは竜胆でいいけど」
「いや別に灰谷竜胆でいいだろ」
「ここまで伝わらねぇモンなの?」
「オレ女怖くなってきた」
「いや普通の女はここまで押せば靡く」
「プロ(兄貴)の指導入っててコレかよ」
「………ズッ」
「ァン?何泣いてんだよ、目にゴミでも入ったンか?」←萌え袖で拭いてあげる
「ヴぅ"…」
「ダセェから見られたくねェ気持ちと珍しすぎる供給を逃しなくねェ気持ちで停止」
「あまりにも相手にされて無さすぎる」
「完全に弟だと思われてる」
「…オレが入ってる間も進展ナシかよ」
「イザナが部下の心配だと…?」
「明日槍降ンじゃね…?」
「ブッ!!!」
「イザナなんで今関係ないトサカの兄ちゃん蹴ったんだ…?」
「モヤッとボールみたいなモンだからだ」
「ムーチョオマエ斑目のことモヤッとボールだと思ってんのかよ」
灰谷御用達のイイ値段のする店にて、焼肉奉行になるムーチョ、メシをしこたま頼むモッチー、タン塩の焼き加減にうるさい一虎の姉ちゃん、蘭が頼んだクソデカカルビをハサミで切らされる竜胆、ホルモンを注文したはいいもののどのタイミングで飲み込めばいいのか分からないイザナと鶴蝶、ヤミツキきゅうりばっか食うせいで河童って呼ばれる獅音……以上愉快な
極悪の世代はみんなお腹いっぱいになり仲良く帰路に着いた。
「オレ黒龍継ぎたい」
「もうハーレー盗むなよ次はねェからな」
「つかあんなデケェもん盗もうとするバカ居るんだな」
「……羽宮は何すんの?」
「は?フツーに高校行く」
「不登校なのに????」
「うっせぇぞトサカ、パイセンが居っから1年は通う」
「……っふーん、…………どこ?」
「竜胆必死じゃんwwww」
「見え見えすぎる」
「1人だけ青春ブチかましすぎだろ」
「まじでボッチなんだから1人だけとか言ってやんな」
「聞こえてっぞ…💢」
「?どういうことだイザナ」
「鈍感ってこと」
「?」
「つか逆にオマエら高校行かねぇの?中卒じゃん」
「は?なんか文句でもあんのか」
「中卒の国王イヤすぎンだろ」
「💢」
「はーいほらそーやって勉強デキネェ図星突かれてすぐキレる〜〜〜〜!!」
「どーせテメェも変わんねぇだろうが!!」
「は?一緒にすんな」
「なぁ、どこ目指してんのってば」
「オレ初めて韓流見てるお袋の気持ち分かっちまったかも、応援したくなる」
「モッチー戻って来いって」
「黙れトサカ」
「なんで??オレ止めただけじゃん??」
「どこって(前のめり)」
「近ェよ……!!○○!!近ぇ離れろ!!」
「○○だな!!ヨシ!!」
「いやオマエそりゃムリだろ」
「オレらでも聞いた事ある偏差値鬼高校じゃねぇかよ」
「いや、今んとこA判定」
「竜胆、ドンマイ」
「は???オレ頑張るから。マジ頑張るから。見とけよ兄貴」
「ガチじゃんwwwwwww」
「……そんな頭イイのかよその、○○」
「かなりな」
「まぁ黒川はバカだから知らねぇだろうけど」
「💢💢💢……は?何?オレもヨユーだし、なぁムーチョ」
「(オレに振るのやめてくんねぇかな)」
「?イザナそんなに頭良かったか?」
「言われてんぞ黒川」
「同じトコ住んでっから…www」
「登と発の違い分かってなかった!」
「は???オマエ下僕のクセに」
「ヤ"〜〜〜!!!」
「ヤバすぎ」
「はは、……は、」
「マジかイザナ……」
「へ?なんか違ぇの?」
「トサカ脳ミソまで鶏かよ」
「じゃ、そーゆーことだから。アタシあっちだから。じゃーナ」
「自由かアイツ」
「兄貴も大概だろ」
「チッ………やってやンよオレも……入ってやる○○…………」
「オイ変なスイッチ着いたぞ……」
「アー、…頑張ってなぁ大将〜…」←嫌な予感
「は?テメェらもやンだよ」
「(やっぱりな…)」
「いや、いやムリだろ」
「オレに口答えすんのか?オレがやれつったらやれ」
「オレもやる」
「…勉強教えろ」
「(上から……)」
「…オレは他人に教えてる場合じゃねぇ」
「オレも♡」←※一番マシ
「教えてやろーか?」
「ひっこめトサカ」
「………(ジッ…)」
「…なんだよ」
「受からなかったらムーチョのせいだからな」
「オレかよ……」
「つかオレのバイクどうなった」
「しっかりパチッてウチに置いてある」
「CBR400F」
「明日使うから取りに行くわ」
数ヶ月後…
「シス単何個まで覚えた?」
「100」
「進み悪くね?」
「まだ80個しか覚えてない竜胆が泣いちゃうだろ」
「バラすなよ兄貴!!」
ここは灰谷家のリビング。受験勉強会中である。
とりあえず参考書を購入し、単語帳に至ってはそれぞれのチームの集会にまで持ち込み勉強していた。打倒羽宮。見上げた負けん気根性である。
黒龍は、残念ながらイザナによって強姦も窃盗もアリの酷い集団にサマ変わりしてしまった。
焼肉の次の日真一郎に会いに行ったイザナはやはり"万次郎"を受け入れられなかった。
強姦には関わっていないものの、窃盗やらクスリやらにはS62全員が関わっており、こんなにもワイワイ勉強会をしているが、やっていることはフツーにレッドカードである。
それからしばらく、一虎の姉ちゃんと直接会ったり何かを喋ったりする機会はなかった。出会ってから1年が経つ今日、外が台風でそれぞれ集会もできず、集まっていた灰谷家のインターホンが鳴った。
「こんな日に誰だよ」
「竜胆出ろ」
「兄貴荷物頼んだ?」
「いや?」
「マジで誰だよ…」
\ガチャ…/
「は!?オマエ!」
「どけ」
「……羽宮?」
「ビショビショじゃん」
「黒川は」
「あ?なんだよ」
「っ!!!」
「ぐっ」
「待て待て待て!!」
「何なんだよ!?」
「アタシのダチが襲われかけた、黒龍に。ソイツら潰して話聞いたら、なんだ?総長の命令でソーユーコトやってるらしいじゃねぇか、え?」
「、それがなんだよ、テメェに関係ねェだろ」
「アタシのダチが襲われかけたつってんだろ話聞けやダボ、なんだ?テメェは兄貴の創ったグループをブッ壊したいのか?ア"?今すぐ止めさせねぇと黒龍潰すぞ」
「やれるもんならやってみろ…!!!」
戦いの火蓋は切られた。会場になった灰谷家リビングは酷いことになった。最終的に一虎の姉ちゃん(with400kgハーレー)vsイザナという構図になり、お互いが立てなくなったため救急搬送された。
どちらも全治2ヶ月の大怪我を負い、引き分けという事になったため最後まで折り合いがつかず、2人は袖を分かれてしまった。
イザナがスネている以上、ほかのメンバーも一虎の姉ちゃんと連絡を取ることは難しく、絵しりとりも止まってしまった。巻き込まれた竜胆(初恋の姿)は泣いていい。
この事件はハーレータイマン事件と呼ばれ、気に入らないことがあれば平気で轢き殺そうとする羽宮姉の最恐伝説、さらに400kgのバイクに乗ったヤツと戦っても負けないイザナの最強伝説に拍車をかけていくものとなった。
それからしばらく…
8月も終わりの朝早く、全治2ヶ月のケガがやっとこさ治った一虎の姉ちゃんはパチンコのグランドオープンに並んでいた。
前方に絶交した白髪を発見。家に帰ろうか迷ったが今月ピンチなので此処で一山上げないとキツい…。…中学生がパチンコで一山あげようとしているのに突っ込んではいけない。
しかし神のイタズラか悪魔のワナか、入店してからできるだけ視界に入らないよう行動していたのに聞いちまったのである。
イザナが天涯孤独であることを、聞いちまったのである。
少年院でアレだけ真一郎真一郎言っていた重度のメンヘラなアイツのことだ、どうなるかは目に見えた。
正直まだ腹を立てているし全然許してない。
だがこのまま放置したら最悪の事態を招きそうだったし、……でも他のS62に勝手にバラしていいような内容でも無いし、………佐野サンは知ってたからあの空気だったんだろうな…使えねェ……と考え、
とりあえず一虎と一緒に居た場地(巻き込まれ)(可哀想)(面倒見が良い)(付き合いも良い)を呼びつけイザナを尾行した。
場「姉御アレ誰?」
一虎「(…アレが竜胆か……??)」
姉ちゃんの手紙を横流しにして読者している一虎は完全に竜胆のファンだった。頑張れ竜胆、負けるな竜胆。ちなみに一虎は竜胆の漢字が読めないので竜胆を「りゅうタン」だと思っている。イメージ画像はゆるキャラのソレである。
姉「アイツ?油屋で働いてる知り合い」
場「ここで働かせてくださいっ!!」
一虎「ここで働きたいんですっ!!」
姉「耳についてるアレ、デケェ風呂のチェーンに引っ掛けたら釜爺が薬のお湯出してくれっから」
一虎「え、やば、つよ、2個も持ってんじゃん」
場「砂金祭りじゃね?」
数時間後……
一虎「姉ちゃんもうお外真っ暗だぜ?」
姉「何言ってんだこれからなんだよ」
場「アイツ全く動きゃしねぇ」
姉「場地は帰りな、カアチャン心配すっゾ」
場「は?何言ってんだ姉御、これからだろうが」
イザナ「………」
姉「ァン?動いたな…静かに着けるぞ」
一虎・場地「「アイアイ!」」
着いたのは孤児院であった。
姉「あーよかった、はやまらねぇで」
一虎「姉ちゃーん、はやまるって何ー?」
姉「自殺」
場「姉御そんな現場にオレら呼んだの??」
姉「絶交してっからアタシじゃ止めらんねぇしオマエら暇だろ」
場「暇だからって事件に巻き込むなよ」
よし、解散か〜、場地家どこ?送ってってやるよ…の流れになった時、黒い服に着替えたイザナが施設から出てきた。
一虎「またどっか行くのか…?」
場「オレお袋に"今日一虎ん家泊まる"って言ってきていい?」
姉「いや帰れ危ねぇから」
場「は?ここまで付き合ったんだから最後まで付き合わせろ」
姉「仕方ねぇなァ…、はいこれ10円」
場「電話してくるから遠く行くなよ〜!!」
数時間後……
「姉、ちゃ、……もう、朝………Zzz…」
「うう"……Zzz……」
「あ"ー、だから帰れつったのに」
一虎と場地を羽宮家まで運び、雨が降ってきたので傘を持って同じ場所に戻ってきた。しかしイザナが居なくなっていた。
何となく行き先はわかったので、全速力でSSモータースまでダッシュ、その途中の路地裏で怒鳴り声が聞こえた。
真一郎は少し迷った後、おそらくイザナの気持ちを考えて、イザナを無理に連れ帰るようなことはしなかった。
一方イザナの気持ちとかまったく知ったこっちゃねェけど、このまま死なれたら本当に後味が悪くなっちまう一虎の姉ちゃんは、放心状態で涙を流すイザナを無理やり引っ張って家まで帰った。
\ガチャガチャ………キィ……/
「姉ちゃん!!!パイセン来てるよ!」
「あ、そっか今日…つか場地は?」
「帰った!!」
「あそ、悪ィ一虎、コイツ風呂に入れてやってくんね?」
「(姉ちゃんが手を引いている…!?やっぱコイツ!?……コイツが竜胆だ……!!!)」
一虎へ。※違います。
「ごめんパイセン、待たせた」
「いいのいいの、大丈夫だった?何かあったんでしょう」
「まぁ多分もう大丈夫かな」
「そう」
「で、あの子は?🂱🂲🂷🂸🂻」
「少年院に居たやつで、黒川って名前🃑🃒🃓🃙🃚」
「そう、お友達?大丈夫?」
「まぁ色々あって、ほっといたら気分悪ぃ事になりそうだから連れて帰ってきた」
「そう」
「……そろそろメシ用意しねぇと、」
「あら本当、お夕飯ね」
一虎の母ちゃんは今日は夜勤である。基本的にシンママは忙しいので、基本的に家のことは(気が向いた時の)姉ちゃんか一虎がやる。今日は気が向いたらしい。全体の1割しかない貴重な日である。一虎は感激した。
「もし、お兄さん?」
「…………」
「暇かしら?」
「……………」
「私暇なの、ポーカーしましょ?」
借りてきた猫状態のイザナは、流れるようにカードを握らされた。逃げろ
ソイツは優しいお姫様の皮を被ったバーサーカーだぞ。
「お名前は?」
「……………イザナ、黒川イザナ」
「そう、初めまして黒川くん」
「…アンタ誰?」
「はぁちゃんの先輩」
「……あぁ、アンタかパイセンって」
「ふふwwそうよ♡」
「………」
「どうかなさった?」
「……なぁ、もし、アンタがこの世に独りぼっちだったら、どうする?」
問うたのは何となくだった。心からの相談は、自分とは遠い存在に向けたほうが楽なのかもしれない。
「独りぼっち?」
「あぁ」
「それは、………お友達も家族もいないということ?」
「………ああ」
「作る♡」
「………は?」
「居ないんでしょう?作るわ♡人間はこの世にゴマンといるし♡」
「………」
「失礼だったらゴメンね?黒川くんはその、…独りぼっちなの?」
「っ、」
「……聞かない方がよかったわね、ゴメンなさい」
「…………別に」
「そうか〜…………、じゃあ、はやく見つけないとね」
「見つける?」
「ええ、家族になってくれそうな人。だって寂しいでしょう」
「……わかった気になってんじゃねーよ」
「そうね、私は独りぼっちでは無いものね」
「…………」
「君とは逆なの。私は今ある家族が邪魔だから」
「は???」
「うふふw…だって、殴ってくるような父親も、翼の折れた母親も私には必要ないの。私に必要なのは新しい家族」
「………へ、」
「カード見たかしら?」
「っ、ああ。」
「じゃあ5000円」
「……コール」
「
トレード5枚」
「ハ…?????」
「ん?(にっこり)」
「いや、5000円掛けてただろ…」
「そうねぇ、レイズ。1万円」
「????……コール」
「はい。」←ロイヤルストレートフラッシュ
「……」←ストレート
「やった〜♪」
「………は??」
「私はね、満足するまでトレードしたいの。家族を。だから黒川くんと同じ、寂しくなる前に家族を見つけないといけないの」
「………………(唖然)」
「お互い頑張りましょうね?♡」
「………………(唖然)」
「え、何これ、何でコイツ宇宙猫になってんの??」
「はぁちゃん、ご飯できた?」
「焼き飯!はい、パイセンの。」
「ありがとういただきます♡」
自分の根幹が揺らぐ事件が起こり、一虎の姉ちゃんの後味のためだけに家まで連れてこられ、最後には死体蹴りと言わんばかりのアタマおかしいお姉さんをぶつけられ、完全にバグらされたイザナはなんかもう全てがどうでもよくなりつつあった。
世界ってオレが思ってたより広ェ。あとこの人怖ェ。助けて鶴蝶。下僕だろ何とかしろ。
宇宙から帰ってきたイザナは、勢いに任せて「オレ、黒龍やめるわ」などと言い出し、一虎の姉ちゃんが作った温けぇメシを食いながら涙を流した。謝りこそしなかったが、一言だけ「ありがとう」と言えたので、一虎の姉ちゃんは許してやることにしたそうだ。
「ねぇ、兄ちゃんが"りゅうタン"君?」
「は?誰だよりゅうたん」
「wwwwwオマエそれ"竜胆"のこと言ってんじゃねぇの?www」
「あれリンドウって読むんだ…!!」
「なんでコイツが竜胆を知ってんだよ」
「手紙だろ?」
「貰った手紙を弟に読ませるなよ…」
「え、どんなお手紙!?見たいみたーい♡」
「やめてやれ」
そのあと成り行きで本物の竜胆を呼ぶ事になり、ついでに他のS62を全員集め、ハミは良くないと鶴蝶も呼びつけ、深夜テンションでイザナとムーチョが天竺創るとか言い出し、四天王まで考えたらしい。玄関前で乱闘した結果鶴蝶が勝ったので天竺四天王筆頭は鶴蝶。末恐ろしい小5である。
受験まで間なしということもあって抗争やオイタはそこそこに羽宮家で勉強会が毎日のように行われた。
一虎の母ちゃんは両手に墨入ってる絶対やべぇノッポを前にしても「カズくーん、手の甲に落書きした人が遊びに来てるわよー」などとブチかます天然なので、耳に薬湯の札がかかってても、ハリーポッターが過激でも、三つ編みでも、ねるねるねるねの妖精でも、トサカ野郎でも、頭がサソリのしっぽでも特に違和感はなかったらしい。1番マシにみえるムーチョには何故かビビっていた。
そんなこんなでなんとか全員同じ高校に通えることになった。ムーチョ様々である。めっちゃビビられてたけど。
勉強会が行われた羽宮家では一虎が唯一の癒しであり、たいそう可愛がられたそうな。今ではすっかり竜胆とイザナに懐いている。
黒龍辞める宣言をしたあと、イザナは青宗を呼び出し「九代目はオマエに譲る。オレはもうどうでもいいから頑張れ」とかめちゃくちゃテキトーなことを言って困らせたらしい。…兄貴から継いだ大事な物をブッ壊してしまった自分と向き合える日は、まだ遠いのかもしれない。
「ん、」
「は?何これ」
ここは高校の教室。本日は始業式。
同じクラスに振り分けられたイザナと一虎の姉ちゃんは登校初日そうそうに、窓際の奥の席をカツアゲしてデカい態度で座っていた。
「オレが止めたから」
「まだ持ってたのかよ…」
「オマエこれ前何描いたンだよ」
「は?どっからどう見てもバイクだろうが」
「分かるわけねェだろ何かと思ったわ」
この時のイザナ(独りぼっち?)は知らない。半年後には佐野家に自分の部屋ができていることも、自分の懇談に真一郎が来ることも、エマが"約束"を覚えていることも、
あの万次郎と双子のバブに乗る日が来ることも、まだ、知らない。
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