──アウディ闇堕ち事件




九井一が札束を握りしめながら白目で涙を流す闇堕ちイベントである。




事の発端を簡単に説明しよう、




ジェラピケ女子会会場の乾家が燃えた。




2001年某日、少年院から出てきた一虎の姉ちゃんはパイセンの紹介でパイセンと同クラの乾赤音という少女と出会った。
3人は噛み合ってんのか噛み合ってねェのかわっかんねェ微妙な会話を重ね、すぐに仲良くなった。


そう、お泊まり女子会を開催するほどには仲良くなった。






良く思わないのは九井一である。
毎日のように顔を合わせていた赤音さんがポっと出の不良女達に取られたのだ。







今まではイヌピーとオレの赤音さんだったのに……


今日もそうだ。図書館に誘ってくれた赤音さんとの貴重な時間に居眠りされたのはアイツらと深夜までメールしてるからだ。オレの赤音さんだぞ。……まぁそのお陰でちょっといい思いできたケド。





楽しい時間も終わり、今日しかないと思った。



「赤音さん!オレ…一生好きだから!
大人になったら結婚してください!!」
「………ふふ、考えとく」
「一生守る!!」













「え、カワイイ〜〜♡」←二階の窓
「一生守る!!(声真似)wwwwww」←同じく


「………は!?」


「あ、2人ともお待たせ!!」
「待ってねぇよ、気にすんな」
「早く着いちゃってねー?青宗くんが上げてくれたの」
「おーいガキ、カッコよかったゾ〜ww👋」
「ステキ〜♡」
「っ"!!見せモンじゃねぇぞっ!!!//////」





コレだから嫌いなのである。





「ねぇ、一君、……約束?」
「ハッ!………うん!約束!!」
「じゃあ大人になるまで待ってるネ(にっこり)」


「ヒュ〜(口笛)」
「お〜♡👏」


「……え!?」
「えっじゃねぇよwwそこは直ぐに迎えに行くねだろーがwww」
「可愛いからいいんじゃなぁい?♡」


「もう2人とも〜wwww
……じゃあ、気をつけてね(にっこり)」
「うん!」














野次馬は入ったけど告白自体は大成功したのでドッキドキしながら帰路に着いていた九井少年だったが、乾家の付近で煙が上がっていることに気が付きダッシュで戻ってきた。





乾家が燃えていた。







焦った九井少年はさっき女子が覗いていた窓のある部屋、つまり赤音さんの部屋まで駆け上がり見つけた赤音さんを背負って出てきたつもりだった。




「赤音さん、もう大丈夫だよ、今、」


言いかけたその時、




「オイガキ!!!ソイツ赤音チャンじゃねぇぞ!!!」

「は、?」

「1階はもう使えねぇ!!今から赤音チャン降ろすから一生守ンなら絶対ェ下で抱きとめろ!」

「っ、!」

「いくぞ!!!」












数時間後

病院


一虎「姉ちゃん!!!!!」
姉「あ、一虎」
一「ケガって!!火事ってっ!!」
姉「あー大丈夫大丈夫、無事だから。火傷ひとつねぇから。泣くなほら」
一「ヴぅ"(泣)」
パ「お風呂に入ってるタイミングで助かったね〜水吸ったジェラピケモフモフのおかげで火傷しなかった…」
姉「風呂にでも入ってなけりゃ臭いで分かったかも知んねぇけどな……」
九「…………」
姉「……赤音チャンも火傷してねぇし酸欠で寝てるだけだから安心しろ、口も布で抑えてたから内臓が焼けてる事もねェよ」
青「(なんでこの人(※姉)はあの人(※パイセン)抱えて2階からジャンプしたのに無傷なんだろう)」
姉「あ"〜マジ、パイセンに怪我なくて良かったよ……」←ゴリラ
パ「ありがとう♡」
一「姉ちゃん…(ギュッ)」
姉「へいへい」
赤「……………ンん"、」
九「!!」
青「起きた!!」
赤「……あれ、」
姉「おいオマエ、ナースコール押せ」








赤音の意識がはっきりして、よかったよかったと言い合っていた病室のドアがいきなり勢いよく開いた。




「オイ!!!大丈夫か…!?!!!」




入ってきたのは息を切らしたセンター分けブルーヘアーのイカつい少年だった。






「あら〜たぃちゃん♡来てくれたの〜?」








柴大寿たぃちゃん。母親が死んでから全っ然帰って来ねぇネグレクト親父に代わり、柴家を仕切っている鬼のような兄貴である。
ではなぜそのたぃちゃんが来たか。
パイセンの幼なじみだからである。


パイセンとたぃちゃんは昔お隣さん同士で、パイセンは柴母が入院した時、柴兄弟の面倒をよく見ていた。柴母が亡くなった時も、下の面倒を見る兄貴業の羽休めになってくれたのは綺麗で優しくて穏やかな5個上のパイセンであり、絶対に将来嫁にすると神に誓って生きてきた。母親が死んだことは悲しかったが、習い事で忙しいはずのパイセンが時間を縫って家に来てご飯を作ってくれるので、気が紛れた。ずっとこの幸せな時間が続くと思っていた。


しかし、ある日突然「明日引っ越す」と挨拶に来られたのである。
引っ越しの原因は親の離婚、離婚の原因は父親のDVであった。



港区の女には2種類ある。港区で生まれ育ったお嬢様と、田舎から出てきて港区の男から集金し経済を回すパパ活のプロである。どちらもカレシの学歴でポケモンバトルをするらしい。ちなみに、港区女子ポケモンバトル一本勝負におけるロイヤルストレートフラッシュは慶應義塾大学医学部だそうだ。
………話が逸れたが…
パイセンは前者だった。同じ区に住んでいる灰谷兄弟の耳にも入るくらい評判の、何でもこなす生粋の港区お嬢様であった。
そんな人が暴力を振るわれるようなことするわけがない。
つまり、パイセンが振りかざされていたのは躾ではなく理不尽な暴力である。


悔しかった。オレと憧れの人のかけがえのない大切な時間は理不尽な暴力によって潰されたのである。



そこからのパイセンの転落具合は酷いものだった。専業主婦だった母親に着いて出ていったため今までのどこぞの姫みたいな生活とは対局の貧乏暮らしを強いられた。隙間風が通るようなボロい家に住み、週8つ習っていた習い事は全部辞め、中学は公立に変わった。白金にある某有名女子私立の首席だったのに。まぁその公立中学で同じような境遇にある一虎の姉ちゃんに出会い意気投合するのだが……。みんなの理想に描いたような高嶺の花は理不尽な暴力によって摘み取られたのである。


しかしそれだけでは終わらなかった。転んでもタダでは起きないタチのパイセンは、己がもう一度港区のトップに返り咲くために慶應義塾大学医学部のカレシロイヤルストレートフラッシュで連続レイズしだしたのである。狙い目は地方から出てきた開業医の息子、イイ寝床と美味いメシと安定したお小遣いが貰えるので。
パイセンは基本おおらかで気立てが良くて"わかっている"女なためカレシを切らすことがないし、調子のいい時は二股かけて同じものをプレゼントさせ片方質に入れる戦法をとっていた。だからバーキンよりレディディオールのほうが重宝している。



パイセンの生活は豊かになっていったが絶賛片想いの大寿にとってはとんだ悪夢であった。財力も甲斐性もない己を悔やんだ。絶対にオレが3高(高身長・高学歴・高収入)になって養ってやるからな、今に見てろよの気持ちである。




この一連の流れがあり、大寿はDVが地雷になったのである。つまり柚葉と八戒はエラい強めにドヤされることはあれど殴られてはいない。
……あくまでも地雷はDomestic家庭内Violence暴力であり、Violence暴力単体は使いこなしているのだがそれは一旦置いておいて……









病室に入ってきたたぃちゃん()と目の合った九井少年は謎のシンパシーを感じつつ特に喋ることもないので黙っていた。




赤音さんとイヌピーは大事をとって入院、一虎の姉ちゃんとパイセンはなんの問題もないので帰宅になった。




「送ってく」
「もう夜も遅いからお迎え呼んじゃったの、たぃちゃんも乗っていきましょ?乗せてくれると思うわ?」



数分後来たのは白い外車アウディだった。パイセンを迎えに来たのは人の良さそうなスラっとした優男だった。パイセンはたぃちゃん(苦虫を噛み潰したような顔)の手を引いて病室から出ていった。



なんとも言えない空気の中赤音さんの方向に視線を戻した九井少年が見たものは「顔を赤らめてドアの方向を見る想い人」であった。






断っておくが赤音さんはパイセンの彼氏に惚れたとかではなく、単純に「年上の頼れそうな彼氏がカッコイイ車で迎えに来てくれるシチュエーション」にドキドキしただけである。なんせ華のJKなので。


ただ、火事によって余裕の無くなっていた九井少年は「赤音さんの心が奪われた…!!」と勘違いし、「なんだ外車か!?外車がよかったのか??赤音さん"待ってるネ"って言ったじゃァん"!!!!…は?何???金ってこと??金さえあればイイってこと????」というカッ飛んだ結論に至った。





そうして始めたのが犯罪代行サービスである。ロクでもない。才能に運命が引き寄せられすぎである。



確認を取ればいいものを、完全に失恋するのが怖すぎて赤音さんに赤面の意味を自分から聞けないため、商売(ロクでもない)のほうが恋愛より先に軌道に乗り始めてしまった。
……なぜこの世界の恋する乙メンはこう、変な方向に才能を極めてしまうのだろうか。まともっぽいのはドラケンだけである。くっつかへんけど。










以上、告白して成功した光の九井一が犯罪代行サービスの代表に闇落ちするまでが、アウディ闇落ち事件である。




この時の九井少年(金の猛者)は知らない。
いつか赤音さんに危ないことをしている事がバレて綺麗な目から大粒の雫を流し怒られることも、足洗おうとしてんのに周りの不良に囲まれてなっかなか洗えないことも、まだ、知らない。


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