双子と白の騎士01

「退いてくださーい、危なーい!!」

上から降ってきた声に見上げると少女が宙を舞っていた。
ピンク色の髪をした少女はスザクが下敷きになったおかげで怪我は無いようだ。
瞑っていた瞳を開き、慌ててスザクの上から退いた。

「ごめんなさい、下に人が居るとは思わなくて・・・」
「あ、いえ。僕も上から女の人が落ちてくるとは思いませんでしたから」

ピンク色の少女が頭を下げる。
上から誰かの名前を呼ぶか細い声が聞こえて、2人は空を見上げる。

「知り合いですか?」
「双子の妹ですの」

政庁の窓から身を乗り出しユフィ、と名を呼ぶ少女に大丈夫、と手を振り返す。

「あの、不躾で申し訳ないんですけど、あの子が飛び降りてきたら受け止められますか?」
「え、今のようにですか?」
「はい」

少女のいる場所を確認するとスザクは多分大丈夫です、と答えた。空から降りてきた少女はありがとうございます、とお礼を言うと建物の中にいる双子の妹に指示をする。少女は戸惑っているようだが、覚悟を決めたのかふわり、と窓から舞い降りた。ぱしり、と今度はしっかりと受け止める。

「あ、りがとうございます」
「どういたしまして」

怖かったのかスザクの首に腕を回し、身体を震わせる少女。

「それにしても、どうかしたんですか?」

姫抱きにした少女の背をあやしながらもう一人の少女に尋ねる。

「はい、どうかしたんです。私たち悪いひとに追われているの!助けてください」
「え?」
「早く!追いつかれてしまいますわ」

そういうと少女は足早に駆け出す。スザクはもう一人の少女を抱えたまま彼女の後を追う。




「有難うございました。助かりました」
「ありがとうございました」

スザクの腕の中から降りた少女は姉の影に隠れるように立つ。

「それは良いんだけど・・・危ないよ、あんなところから飛び降りるなんて。・・・えっと、」
「自己紹介がまだでしたね、私は・・・ユフィ。此方は妹のエヴァですわ」
「ユフィとエヴァ?」
「そう」

にこりと笑うユフィと姉の後ろに隠れたままコクリと頷くエヴァ。

「ごめんなさい。エヴァは人見知りが激しいんです」
「いや、気にしてないよ。僕は、」
「駄目ですよ?あなたは有名人なんですから。枢木ゲンブ首相の息子さん、枢木スザク一等兵」
「なっ」
「間違ってないでしょう?」
「テレビで、見ました」

2人はにこり、と笑む。同じ顔立ちのユフィとエヴァ。服装も色違いでお互いの仲が良いのが見てとれる。ただ違うのはユフィは髪を少々弄っているのに比べ、エヴァは何もせずにただ下ろしていた。

「それで、嘘なんでしょ?悪い人に追われてるって、・・・ユフィ!?」

スザクの視界にはエヴァしか居なかった。何処に、と視線を巡らすと黒猫と対峙しているユフィの姿が目に入ってきた。警戒してなかなか近づいて来ようとしない猫に対して、指を出して鳴き真似をしていた。

「ごめんなさい、ユフィはいつもこうなの」
「気にしてないよ。それより、何で逃げてきたの?」
「・・・・悪い人に追われてるの」

視線を泳がせて健気に姉の言葉を繰り返すエヴァに苦笑を漏らすスザク。恐らくこれ以上聞いても彼女はこの言葉しか言わないだろう。そこへ腕に黒猫を抱えたユフィが戻ってきた。

「可愛いでしょう?エヴァ、スザク」
「かわいい」

エヴァがふわりと微笑みながら猫の喉を優しく撫でてやると、黒猫は気持ちよさそうに鳴く。スザクもそっと指を伸ばすが、

「うっ・・・」
「あら」
「まぁ」

がぶり、と噛み付かれた。エヴァとユフィはその光景に目を開かせて驚くしかなかった。