姫と幼馴染

ルルーシュがゼロによって殺されてから数ヵ月後。世界は彼の願った優しい世界へと変貌していった。



ザーザーと雨が降るある日。エヴァニエルとクラウディオは喪服に身を包み、2人で一緒の傘に入っていた。2人の間に会話は無く、ただ目的地へと足を進めるだけだった。エヴァニエルの腕には抱えきれないほどの花があり、歩くのが大変そうである。

「・・エヴァ、着いたよ」
「うん・・」

目の前には4つの墓石。そこに記された名前はエヴァニエルの幼馴染でクラウディオの家族。ただ無機質な石に彫られた名前だけが彼らの墓を表している。エヴァニエルは濡れるのも構わず、クラウディオが差している傘から抜け出し4つの墓に丁寧に花を供え、手を合わせる。クラウディオも彼女の後を追い、傘を彼女の上にかざす。

「エヴァ、泣き言を言っていいかい?」
「・・うん」
「どうしてアイツらが死ななきゃいけなかったんだ・・・。どうして、なんで、エヴァを、俺を残して・・・」

俯き肩を震わせるクラウディオが発した言葉には彼がこれまで溜め込んでいた想いが凝縮されていた。エヴァニエルは背伸びをし、クラウディオの頭を抱き寄せる。

「そう、だね。どうして他の人じゃなくて、みんなだったんだろうね。・・・でもね、それは他の人も、同じことを思うんだよ。黒の騎士団の人も、ブリタニアの人間も。だからね、二度とこんなことを思う世界に、しちゃ駄目なの。それが、生き残った私たちの、義務」
「エヴァ・・・」

エヴァニエルの背中にクラウディオを逞しい腕が廻る。

「ごめんね、弱くて、みんなに頼りっきりで・・・。もっともっと強くなるから、わたし・・・」
「姫さまがいるから俺たちは強くなれた。だから、謝らないで」
「最後、だから。みんなのことを思って、泣くのは、これで最後にするから。みんなとの楽しい思い出を、糧に生きていくから。だから、だから、もう少し泣かせてください」

傘も差さずに2人は抱き合いながら涙した。最後にする、と誓って。






びしょ濡れになって屋敷へ戻った2人を待っていたのはコーネリアの怒号だった。冷えた体を温めるためにシャワーを浴びた2人はエヴァニエルの部屋で彼女の濡れた髪をクラウディオが優しく乾かしていた。

「クラウディオ」

気持ちよさそうに目を閉じていたエヴァニエルはゆっくりと眸を開け、彼に視線を合わせる。

「私ね、ナナリーのお手伝いをすることに、したの」
「ナナリーさまの、ですか」
「うん。だからね、クラウディオ・・。まだ私の傍に居てくれる?」

クラウディオはエヴァニエルの正面に回り、膝を着き、彼女の右手をとり口付ける。

「エヴァが望むのならば永久に貴方に仕えよう」