見上げた鳥

「先輩の名前って本当に偽名臭いですよね」
「まぁ、僕が考えた名前だしね」


生徒会室、と呼べるであろう場所に澄百合学園の権力者達は己に課せられた使命を全うしていた。 要するに、書類作成である。
子荻と***は一般の学校で言う生徒会長と副会長という役割にあたる。 そのため学園運営やらの書類が回ってくる。***はここ最近、実習が無かったため当の昔に書類を片付けていたが、子荻は昨日まで実習に参加していたため、書類は溜まりに溜まっていた。 さすがに可哀想になった***が手伝っていたが、
子荻のサインがいる書類しか残っていないため いまは来月に行われる下級生の実技訓練の指導レポートを作成していた。

「今更ですが、私が名前考えてあげましょうか」
「おま、僕はこの名前をそれなりに気に入ってるんだぞ」
「ですが、先輩。 さすがにその名前じゃ一般人でも気付きますよ」

書類にサインをしながら子荻が冷めた視線を送るが、その視線を敢えて無視しながら キーボードに指を滑らせる。

「ねぇ、***先輩。 先輩は、異性を好きになれると思いますか?」
「は?いきなり話が変わったな」
「だって、これ以上その名前の話をしても先輩無視するだけですから。 で、どうですか?」
「僕が男を好きになるかだって? 友愛や家族愛はあるんじゃない?」
「そうじゃなくて、恋愛ですよ」
「さぁ。 そういうお前はどうなんだ、子荻」
「有り得ないですね。私たちの大半は神理楽[ルール]へと駒を進め、恋などいう文字に かけ離れた世界へと羽ばたくのですから」
「そう、僕達の最終到達点は【死】。誰にも見られず、誰にも悟られず、朽ち果てる。それが此処にいる僕達の運命だ」