頬を伝う涙は黒色

先輩、先輩の弱点を教えます。それは優しさです。先輩は敵への非情と比例するかのように味方へ愛情を注ぐ。いつかその愛情が先輩を傷付けますよ。

無織ちゃん、君は優しすぎるのが傷だね。君のその優しさは身内にだけ発動されるけど君のその身内はどれだけいるのかな?闇口憑依にその娘、その異母兄、それから澄百合学園の生徒たち、それから零崎一賊。それを全て守り抜くのは困難だ。それに、きっと君はこれからまだ多くの人間と関わりあう。その人間まで守るとなると君が倒れるよ。ほどほどにしないとね。

ジェノ、その甘さを捨てろっちゃ。その優しさはお前にとっての強さにも弱さにもなるっちゃ。いつかその慈愛はお前を殺すっちゃよ。


分かってる。分かってる。守れなかった。僕は守れなかった。親友であり可愛い後輩だった子荻を守れなかった。玉藻や一姫も守れなかった。だから、今度は絶対に守る、と決めた。僕の命を犠牲にしてでも守ってみせると決めたんだ。




経正が死んだ翌日。***はいつも通りの姿で軍議に現れた。誰もが欠席すると思われたのに、彼女は何事も無かったかのように颯爽と現れた。

「将臣、君に話したよね。僕には3つの名前があるって」
「あ、あぁ」
「僕は戦場ではなるべく『***』でいようとした。けれど、それは間違いだったんだ、と確信した。だから、将臣僕はこれから戦場では殺人鬼として行動するよ。零崎史上最も多くの人間を虐殺した殺人鬼として、ね」

***の発言に将臣は驚きつつも疑問を口にした。

「お前、どうしたんだ。いきなり…」
「僕は多くの人間から甘いと言われ続けてきた。けれど、僕はその甘さを捨てなかった。そして、その結果がコレだ。だから、僕はもう甘さは捨てる。もう僕は平家以外の人間を敵と見なす。例え、それが赤子であろうと帝であろうと神であろうと僕は殺すよ、徹底的に零崎してやる」