死んだ咎

「やぁ、敦盛。久しぶりだね」
 
にっこりと笑う女性に出会った。

「敦盛さんの…知り合い?」
「…義姉上」
「まだそう呼んでくれるのかい。それはそれで嬉しいよ、義弟殿」
「この惨劇は貴女が起こしたのですか?」

女性は笑みを深くして頷いた。白龍はその邪気に当てられたのか目を回し譲に介抱されている。朔や景時、譲はその光景に耐えられないのか目を背けている。

「一応言っておくけれど、コイツ等から襲ってきたんだ。だから、正当防衛だよ」

女性は笑顔で幾多の屍が折り重なった上に座っていた。屍たちの表情は全て恐怖で歪んでいた。女性の服装には返り血一つ浴びていない。女性の顔立ちは幼さを残しながらも鋭さを帯びた瞳を持っていた。若草色の特徴的な髪は風に遊ばせている。

「だとしても、何故このような惨いことを…」
「敦盛、忘れたのかい?僕は零崎一賊の長女【虐殺魔術(ジェノサイドウィザード)】だよ。人を殺すことは君達が呼吸をすることと同じ行為さ」
「なっっ」

***の言葉に望美たちは絶句する。そんな一行をさして気にせず***はただ自分の言いたいことだけを伝えていく。

「なぁ、敦盛。なんで裏切ったんだい?どうして裏切れるんだい?君の兄を、アレを、怨霊にしたのはお前、だろ?」

笑顔はそのままなのに、その場にいる全員を凍りつかせる殺気を敦盛に向ける。びしり、と固まった空気も意に介さず***は言葉を淡々と綴る。

「お前が心配だから経正はこの世に戻ってきてしまった。僕は…アレは絶対に戻らないだろうと思っていた。そういう奴だと信じていたのに。お前のせいでアイツは戻ってきた。その咎をお前は忘れたつもりか?」

そこで望美はやっと気付いた。***の笑顔が貼り付けられた偽者だと。その笑顔に感情は無く、ただただ形作っていただけだった。返事の無い敦盛に興味が失せたのか諦めたように立ち上がった。

「…死なない程度に生き残れよ、敦盛。お前が死んだらアレが悲しむから」

そのときだけ彼女は笑顔を納め、俯いた瞳には愛しさと辛さが交じり合った色が浮かんでいた。しかし、すぐにあの誰も寄せ付けない笑顔を顔に貼り付けた。

「源氏の神子とそのお仲間さん。戦場で会うのが楽しみだよ。知盛に興味を抱かせたその剣で僕にも向かってきてくれよ」

それだけ言うと***は音もなく一瞬で消えた。