手を繋いで隣を歩けるだけで

ジノは名前の病室に毎日のように見舞いに来ていた。しかし、彼女の顔を見ることは出来ない。ただ彼女の世話係である人間に持ってきた花を渡すだけだった。それでも、彼は毎日飽きずに彼女の元を訪れ続けた。

そんなときだ。彼女の願いとゼロの口添えがあり、ジノはようやく面会が赦された。といっても、監視役としてカレンが立ち会うことになるが。病室の扉が開かれる。広い病室の中にポツンと置かれたベッドの上で少女は羨ましそうに青い空を眺めていた。

「名前・・・」
「・・私は、ルルーシュの支えになりたかった。ルルーシュの安らげる場所を作りたかった。ルルーシュの望むことをしたかった。だから、貴方の下を離れてルルーシュの下へ行った。それを後悔したことはありません」
「・・・・」
「ルルーシュを亡くしてしまった。彼の後を追いたい。けれど、それをギアスが止めてしまうのです」

ギアス。その言葉にジノとカレンが反応する。彼女の肩に触れ、視線を自分へと向けさせる。微笑みながらも涙を零す名前。

「ギアスを、かけられたのか?」
「えぇ。願いという名のギアスを」
「え・・・」
「生きてくれ。それがルルーシュの私へのギアスです」

その言葉にカレンとジノは言葉もなく名前を見る。名前は何かを定めたように瞼を閉じる。

「だから私は生きることを決めました。彼の願いを無駄にすることなく生きます」
「名前・・」

ほっ、と息を吐くジノににこり、と微笑む。そして、眉を下げ再び泣き出しそうになる名前にジノもまた苦しそうに眉を潜める。

「ジノ・・・私は一度貴方を裏切ってしまった。その事実は絶対に覆らない。私は貴方の隣に立つ資格はもう無い。けれど、けれど・・・・私はもう一度貴方と一緒に生きたい・・・!!」

再び涙が頬を伝いながら名前は己の想いをジノへとぶつける。ジノの空色の瞳に己の瞳を映しながら。ジノは軽く息を吐き出すと壊れ物に触れるかのように彼女をそっと抱き寄せた。

「それを言ったら俺だってお前を殺そうとした。だから、お互い様だ」

コツンと額をくっつけ、優しく微笑む。名前もジノの笑顔につられて笑う。カレンはその姿を見て目を細める。合わせていた額を放し、ジノは名前の前で跪く。

「ジノ?」
「名前、俺はもう貴族の息子でもナイトオブラウンズでもなくなった。ただのジノ・ヴァインベルグだ。それでも、俺と一緒に生きてくれるかい?」

差し出された手の中には指輪。驚き口元を隠す名前の手を外し、軽い口付けを落とす。

「約束・・だろ?俺が18になったら結婚するって」