廊下を歩いてくるサーヴァントに手を挙げて挨拶すると彼女も会釈で返してくれる。うん、相変わらず美しい。サーヴァントは揃って美男美女揃いだけど、その中でも彼女は五指に入る。白銀の長い髪と白磁の肌、華奢な手足、金色の瞳はいつも穏やかなである。彼女の養父母が男装を強制させたのも無理はない美しさだな、と1人納得する。
「マスター如何なさいましたか?」
「特に用事は無いけど、名前が見えたから。名前はどうしたの?」
彼女の行く先は食堂も無ければ彼女の自室も無い。
「ナイチンゲールに本を借りる約束をしておりまして。それを取りに行くところなのです」
「へえ〜、何の本?医学系?」
「はい、西洋の医学に関することです」
さすがは古代インドで医術を民間に広めた英霊なだけある。未だに勉強熱心とは恐れ入る。
「名前!」
「アルジュナ」
「おや、マスターもいらしたんですね」
普段頼りになるサーヴァントだけど、異父兄と妻のことになると視野が狭くなるのはどうにかならないのか。
「どこに行くつもりだ?」
「ナイチンゲールのところですよ」
顎に手をやり考えるインドの英雄の姿はそれは絵になる。妻を兄弟で共有した逸話を持つ彼にとって名前は唯一共有を拒んだ最愛の妻であり異父姉でもある。残された文献ではカルナと名前は血の繋がりを実母より聞かされたが、アルジュナについてはその記載は無かった。つい出来心でそれとなく聞いてみたが、彼自身は血縁は気にしていないようだった。そんなものなんだろうか、とダヴィンチちゃんに聞いてみたが、「古代エジプトでは親子で結婚した王も居るし、日本だって血が近い者同士の結婚も多かっただろう。今の世では不思議に感じることも昔は普通だったのだよ」と諭された。
「俺も共に行こう」
アルジュナが言い出したら聞かないところを自分よりも長い付き合いのある彼女はとてもよく知っているのだろう。反対も文句も言わず微笑んで頷いた彼女は、自分に会釈してアルジュナと肩を並べてナイチンゲールの部屋へと向かった。
171224