嘲笑うかのように流れ星は落ちていった

遺跡に忍び込み、人為的にヴァールを誘発させる証拠を掴んだ。ウィンダミア軍から逃げる最中に美雲の歌が聞こえ足が止まるフレイヤを引き返し腕を取る。

「止まらないで」
「美雲さんが…」

しかし、扉が閉まってしまう。焦るカナメの声に大丈夫先に行って、と応える。メッサ―とカナメ、それにレイナとマキナが揃っているあちらは問題なくこの遺跡を突破出来るだろう。緊急時用にあるはずのシャッターのコントロールキーを探すもそれらしきものは見当たらない。追手が近づく音に舌打ちしながらコントロールキーらしきものを探しているとガシャンと音がした。ハヤテが通気口の蓋を外していた。ミラージュに先に降りてもらい、そのあとすぐにフレイヤを押し込む。時間差で通気口に身を躍らせる直前。懐かしい風が流れてくることに口元が緩む。どこか分からないけど彼もここに居る。会いたくないけれど、会いたい。垂直に近い通気口を滑り下りながら下らない戯言が頭に浮かぶ。




通気口の先は鍾乳洞のような開けた場所。まわりに人影は見当たらず、ミラージュが先頭に立ち、ハヤテ、フレイヤ、私と続く。しかし、すぐに照明を当てられ足が止まる。緑の軍服に帯剣した軍人は会いたくて堪らなくて、でも会いたくない、許嫁その人だった。

「罠にかかったのは3匹か…。統合政府の犬どもと裏切り者のウィンダミア人」

7年も経った。面影は残るも少年から青年へと移り変わっていた。裏切り者の言葉に心が痛む。裏切ったつもりは無くとも、彼にはそう映る。ボーグはウィンダミア人の身体能力を活かして階段の真上から飛び降り、ミラージュとハヤテを倒す。どうにかして後輩だけは守ろうと彼女を自分の陰へ隠す。

「私の後ろに居なさっ、きゃあ…!!」
「なまえさん!!」

フレイヤに視線を向けていると突然腕を引かれ体勢を崩しかけるも、逞しい腕が己を支え地面と衝突することは避けられた。

「風を汚す裏切り者が我が許嫁の傍にあったなど…」

間近に聞こえる声に顔を上げると、許嫁の怒りに震える顔がそこにあった。裏切り者とは私のことではない…?まだ私のことを許嫁と思ってくれてる…?僅かな希望がルンに輝きを集めて、慌てて手で覆うも上から見ている空中騎士団にはばれてるだろう。

「いい、なず…け…?なまえさんが…?」
「裏切り者の臭い風がその名を呼ぶな!汚れる!!」

ボーグの背に隠され、フレイヤの喉元へ剣が突きつけられる。ウィンダミア人のフレイヤならばルンを通じてボーグの怒りが伝わるだろう。そして、私がボーグの言葉に喜びを感じていることも。

「へっ、何が空中騎士団だ。丸腰の女相手に剣を向けるのが
お前らの騎士道なのかよ」

ボーグを煽るように話し出したハヤテに顔を上げる。何か作戦があるのだろうか。だとしても、ただでさえ人数の差がある上にウィンダミア人と地球人では身体能力に差もある。何か考えがあるにしても煽りに乗らないのが最善。ボーグの肩に触れようとした瞬間、眩い閃光に視界を奪われ、殴打音と男女の呻き声が聞こえた。

視界が正常に戻ると地に伏したミラージュとハヤテの姿に息を呑む。

「気を抜くな」
「地球人どもが」

双子と思わしき団員がミラージュとハヤテを打ちのめしたようだ。女性には手加減してるのだろうか、ミラージュの傷はハヤテほどでは無い。座り込んだボーグに寄ろうとしたところで双子の片割れから問いかけが飛んできた。

「なまえ・ロラン・グーラ嬢で?」
「、はい。グーラ家の長女になります」

膝を折り淑女として教わった礼を返す。グーラの長女として、コンファールトの後継の妻として教わってきた礼儀作法。まさかこんな戦場で礼を返すとは思わなかった。

再び打音が響く。ボーグがハヤテに暴行を加える音だ。ミラージュは既に拘束されてる。大丈夫、まだ大丈夫。きっと殺されない。彼らが欲しい情報を持っているし、何よりボーグが私の前で人を殺すはずないと信じている。

閃光騒ぎの後に降りてきた壮年の男性に振り返った。

「失礼ですが、ヘルマン様でしょうか?」
「そうだが、グーラ嬢とお会いしたことは会ったかな」
「いいえこれが初めてです。ですが、ボーグや弟の手紙よりヘルマン様のお話は伺っております」
「…グーラ少騎のことは聞いておられるか?」

既に平均寿命を上回っているであろうボーグの師に頷く。そうか、あの子は少騎になっていたのか。

「私もワルキューレとしてあの場に居りました。あの子が戦場に居たことも風に召されたこともはルンで感じました」
「初陣だった、私が傍に居ながら若い風を散らせてしまった。すまない」
「……いいえ。尊敬する師であるヘルマン様に惜しんでもらえた、それだけで十分です。あの子へ最大の賛辞ですわ」

娘を見るような目で私を見つめていたヘルマン様はボーグへと視線を向けた。

「どうした?立てよ、地球人」
「ボーグ、グーラ嬢も見てるのだ。尋問する前に殺す気か?」
「尋問?今すぐに処刑すべきです。我々の知りたいことはなまえが話すでしょう。口は1つで構いません。いいな?」

ちらりとボーグが確認の視線を向けてくる。ここで全員が助かるには捕虜となるしかない。

「私が知っていることは全てお話しましょう。ですが、ここにいる全員の命が保証されるならば、ですが」
「なまえ、おまえ…。こいつらの味方をするのか?」
「ボーグ…」
「お前のっ、お前の弟を殺したこいつらに味方するのかっ…!」



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