「なまえ、あなたいい加減にしなさい」
ブリーフィング後に美雲からキツイ声で呼び止められる。珍しく怒りを露わにする彼女に目を伏せる。
「空中騎士団に知り合いが居ようと私たちワルキューレは歌わなければいけないわ。銀河中に歌を響かせる、その目標を貴女は潰すつもり?」
「…そんなつもりは…」
「無いのなら、それを次で証明しなさい。もし証明出来なければワルキューレから去ることね」
それだけ言うと美雲はヒールを鳴らして去っていった。キツイな美雲は、と零すもそれだけ彼女が歌に掛けているという事だ。
最初は見つけて欲しくて、ここに居ることを知って欲しくて。有名になれるならモデルでもアイドルでも何でも良かった。ワルキューレの選抜オーディションの要項に戦場にも赴く可能性があると記載されていたのが参加した決め手。戦場にも行くならば今は鎖国状態にある母星にも行く可能性はアイドルよりも高い。母譲りの黒髪は弟や許嫁の迷惑にならないように珊瑚色に染めた。名前も本名ではなく、ミドルネームを使った。いつか見つけてくれるように、いつか帰れるように。ただそのために歌ってきたのに。
「なまえ…」
隣いい、と聞いてくるカナメに頷く。この寮に住むフレイヤとミラージュはいま裸喰娘々で食事を取っている。
「契約の更新、どうするつもりなの?」
「……フレイヤは空元気なの丸分かりね」
「そうね」
「……迷ってるの。除隊してもウィンダミアには帰れないし、帰れたとしても裏切りやスパイ容疑で処刑されるのが目に見えてるもの。…カナメ、」
「なに…?」
「空中騎士団に知り合いが居るわ」
「…貴女がおかしかったのはそのせいね」
「えぇ…。あの風を、ルンを、間違えるわけないわ。ずっと一緒に居たんだもの。彼が生まれたときからずっと傍に居たんだもの…」
ぼろりと零れた涙は止まらずに零れ続けていく。カナメにそっと肩を抱き寄せられ、彼女の腕の中で涙が枯れるまで泣き続けた。
なまえは泣いた翌日に契約更新に判を押した。帰る場所の無い彼女にとってここが帰れる場所になることを願いながら、書類を受け取った。