「なまえ、生きてる?」
「……えぇ、生きてるわ」
シャワールームに長時間籠もる私にカナメが生存を確認してくる。早く上がりなさい、とだけ残した彼女に心から感謝する。今は誰とも話をしたくない。話せない。
「っ、ヴォルフ…!!!」
ルンが感じてしまった。最愛の弟が風に召されたことを。あの場にいたのだ、誰かに撃墜された。新統合軍かもしれない、その方がいい。もしもケイオスの誰かだったら、私の知ってる誰かだったら、Δ小隊だったら。
「っ、うぇっ………」
排水溝に胃液が流れていく。吐きすぎてもう胃液しか出てこないのに、嘔吐感は止まらない。見つけて欲しくて入ったワルキューレで、私は弟を殺した。
3歳下の弟とは里帰り時に会うだけだったけれど、姉と慕ってくれる弟が可愛くて堪らなかった。半分の繋がりだけど、髪色もルンの色も母から受け継いで、知らぬ人には異父兄弟とは思われなかった。
「なぜ姉上は家に居ないのですか?」
「えっと、」
「もっと姉上といたい」
可愛らしさのあまりにぎゅうっと抱きしめた。
養父がうまく説明したけど、納得してない顔で見送ってくれた顔。騎士学校に入学します、と挨拶に来たあどけなさの中に成長がみえた顔。両親を亡くした日、抱き合って泣いた顔。私を守るために、グーラ家の家長として決断した顔。
必ず迎えにあがります、だからどうか、あねうえ…。泣くのを堪えた顔に見せた決意に私も頷いた。許してください、と言外に訴えた彼の迎えをずっと待ってた。
それがこんな結末を迎えるなんて。ポキリと折れてしまった心はこれ以上歌う事を拒絶した。
171228