転生したら、名探偵コナンの世界の住人になっていました。主要人物は遠くから眺めているだけで十分なんです! 裏切りのステージB
ステージの上には、天井から首をロープで括った波土さんの姿が…。
(………)
私は蘭ちゃんと園子ちゃんの悲鳴を聞いたせいか、言葉にならない感情が押し寄せていた。
「あぁ…、波土さんが…」
園子ちゃんはショックを受けて、現実を受け止められず、両手を頬へと伸ばしていた。
空かさず飛び出したのは、安室さん、沖矢さん、コナン君だった。
「あ、ちょっとコナン君!」
コナン君を追いかけようと身を乗り出した蘭ちゃん。すると、腕を伸ばした梓さんがスっと止めに入った。
「ダメよ、エンジェル。…貴女は、入ってはダメ。この血塗られたステージには、相応しくないわ」
(……エンジェル?エンジェル……!?)
ドクリ…。
私の心臓が嫌な鼓動を鳴らした。
名探偵コナンの世界で、蘭ちゃんの事を"エンジェル"と呼ぶのは作中には1人しかいない。
──ベルモット。
今の梓さんは、ベルモットが変装した姿だ。
蘭ちゃんも梓さんを不審に思ったのか、複雑な感情が顔に出ていた。
園子ちゃんも苦笑いでベルモットが咄嗟に出してしまった"エンジェル"の言い訳をしていた。
「とにかく、事件の捜査は、彼らにまかせましょう」
そう言いながら、ベルモットはホールで捜査する3人を見やっていた。
「あのー、…とりあえずロビーに戻りませんか?」
ホールを見つめる3人に、意を決して私は声を掛けた。無いとは思うけれど、沖矢さんに目をつけられてしまっては、コナン君が助けた意味が無くなってしまう。ましてや2人はまだ10代の女の子なのだ。精神的なショックも大きいだろう。
「は、はい。そうですね…」
元気の無い蘭ちゃんの声。
こんな時、どんな風に声をかけていいのからない私は、不甲斐なさを感じてしまう。
♦
しばらくしてから、警察から目暮警部と高木刑事が捜査に加わった。
ロビーではそれぞれ事情聴取が行われている。
筆跡鑑定の為、私も名前の横に「ゴメンな」の一言を書いた。
「ありがとうございます」
「はい」
文字を書いた手帳を高木刑事に返すと、安室さんが再び沖矢さんに絡んでいた。
「左利きなんですね」
「えぇ、まぁ。いけませんか?」
「いえいえ。この前お伺いした時は、右手でマスクを取られていたので。右利きなのかなぁと…」
「そうでしたか」
「まぁ、気にしないでください。ただ…、殺したい程、憎んでいる男が…レフティーなだけですから」
(……安室さん)
一歩間違えたら、一触即発な雰囲気だ。
けれど本当にわからないのは、何故赤井さんが諸伏さんが自決した時"自分が殺した"と主張した事だ。
それにより、赤井さんが買わなくても良い恨みを安室さんから買ってしまった事。
(…どうして、わざとそんな事を)
「……ね、ちゃん」
「………姉ちゃん!」
いつから呼ばれていたのだろう。
視線を下にやれば、コナン君に呼ばれていたようだ。
「!……コナン、君」
「千束ちゃん大丈夫?ひょっとして、具合が悪くなっちゃったの?」
しまった。
すっかり考え混んでしまったらしい。
コナン君に心配かけてしまった。
「ううん。大丈夫、ごめんね。ちょっと考え事に夢中になっちゃって。どうしたの?」
「そう?…ならいんだけど。事件が解決したから、ホールに集まってて」
「うん。わかったわ」
程なくして、3人からの推理が説明された。
話を聞けば、いつだって終わりは悲しい結末だ。波土さんは自害し、マネージャーの佳苗さんが、他殺に見せかけた事により逮捕された。
ASACAの『か』の字が、何故『K』では無く『C』なのかの理由も解決した。Cafeの『C』から取ったのだと。
事件も無事に解決し、解散となり各々帰宅に着いた。
私と言えば、家に着いた瞬間にどっとした疲れが出たのかベットにダイブして、気が付けば朝日が登っていた。
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