転生したら、名探偵コナンの世界の住人になっていました。主要人物は遠くから眺めているだけで十分なんです! 裏切りのステージA
「ポアロの店で僕が波土さんの大ファンだと話たら、リハーサルを見られるように手配してくれたんです」
「彼の所属するレコード会社に出資しているのが、偶然園子さんの鈴木財閥だったらしくて…」
そう言えば、数日前にそんな事を園子ちゃん達と話をしていた気がする、と数日前の記憶を辿っていた。
続いて梓さんが蘭ちゃんの問いかけに苦笑いを浮かべながら。
「お店じゃ隠してたけど、私も大ファンなの!でね、お店のシフトを終えて、ここに向かう安室さんの跡を追いかけて来ちゃったって訳!」
ニッコリ笑いながらさり気なく安室さんの腕に自分の腕を絡める梓さんに、私は些細な違和感を感じた。
(…あれ?梓さんって…こんなに安室さんとの距離近かったっけ?)
「驚きましたよ。ここへ入ろうとしたら、彼女に呼び止められて。まぁ、スタッフに事情を話して、何とか入れて貰えましたけど」
平然と答える安室さんの肩に、梓さんは頭を傾け笑みを浮かべていた。
「…驚いたと言えば、貴方も来ていたんですね?沖矢昴さん」
おぅふ…。
2人の周りだけ温度が下がったような気がする。沖矢昴=赤井秀一と言う答えが出ている安室さんは、やたら鋭い視線を沖矢さんに向けている。
「先日はどうも。僕の事、覚えてますか?」
意味深な視線を送る安室さん。
「えぇ、貴方は確か……、宅配業者の方ですよね?」
真剣な眼差しで睨み合う両者。
しかし、安室さんは沖矢さんの答えに、目が点になっていた。
「……えっ?」
一気に毒気を抜かれた安室さん。
「えぇ、………まぁ」
安室さんの反応に笑いそうになってしまったのを抑えるのに必死だった私は、彼の死角になるように後ろを向いた。
(ごめんなさい安室さん………そしてナイス赤井さん!!)
さすが、頭の回転が早い。
一瞬にして何処か和やかな空気に包まれた。
「んじゃあ!後はファン3人でごゆっくり!」
「コナン君も帰るよ」
園子ちゃんに続いて蘭ちゃん。
蘭ちゃんはコナン君の手を握り、あたふたしながら着いて行く。
(…私も帰ろ)
「あ、園子ちゃん蘭ちゃん待って、私も一緒に帰るわ!」
正直な所、安室さんと沖矢さん梓さんの3人と一緒になるのを想像すると、胸にモヤモヤとした何を感じた。それは、ここにいたら何かに巻き込まれてしまうんじゃないか、と言う保守的な感情だった。…3人には失礼だけれど、私も2人と帰る事にした。
が…。
物事がそう上手く行くはずも無く、蘭ちゃんに引かれた手を握ったままコナン君は振り返って、梓さんに質問を投げかけたのだ。
「ねぇ、梓姉ちゃん」
「…ん?」
「波土さんを好きになった理由って、やっぱギターが上手な所だよね?梓姉ちゃんもギターすっごく上手だし」
「えぇ、もちろんそうよ」
「あれ?梓さんて、ギター触った事もないって言ってませんでした?」
と、疑問そうな蘭ちゃん。
「ほらー、この前私達のメンバーに誘った時に…」
(…ひょっとして、安室さんがギター弾いた時の話かな?)
「あぁ、ほら…あの時は女子高生のバンドに入るのが恥ずかしくて思わず」
照れくさそうに笑みを浮かべる梓さんと、梓さんを睨むコナン君。いつの間にか2人で仲良さそうに談笑する安室さんと昴さん。
場違い感が漂うこの場所に居心地が悪くなり、私は帰ろうとした。
「あのー、じゃあ私はお先に失礼…」
「します」と残りの3文字は、後から入って来た警備員(?)の悲鳴によりかき消されたのであった。
ホールに繋がる扉に駆け寄る皆と、数秒後の蘭ちゃんと園子さんの響き渡る悲鳴に悟ってしまった。
私は事件に巻き込まれたのだと。
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