il10 18:22




「そんでよー、どうするんだあの野郎共は」

ギアッチョの疑問にそばに居たメンバーたちはただ肩をすくめて見せるだけだった。

あれから4日経ったが、相変わらずイルーゾォは2人いる。
しかしチームの生活にはさほどの変わりもなく、これといった問題も起こっていない。
ただオリジナルのイルーゾォはコピーの彼をとても嫌っているらしく、会話どころか顔を合わせようとすらしなかった。



日没を迎え、そろそろ夕食を作らなければならない。

「なまえ。スペアの奴を呼んできてくれ……飯だからな」メローネが右手をひらひらと振った。

スペアというのはコピーのイルーゾォに付けられたアダ名で、鏡の"スペッキョ"をもじったものらしい。
しかし恐らくは代替品という意味合いでもあるのだろう。
というのも、これを名付けたのが他でもないオリジナルのイルーゾォだからだ。

なまえはリビングを出て、廊下を中ほどまで行ったところにある階段下スペースの物置前に立った。
大人が屈んでやっと通れる程の小さな扉を3回ノックする。

「スペアさん、夕食ですからリビングに行きましょう」

部屋の主であるイルーゾォ、のスペアはすぐに出てきた。

「ああ、そうか。ありがとう、すぐに行く」

窮屈そうに体を縮めて出てきたスペアは髪を結っていない。
本物のイルーゾォが、髪型まで同じなんていうのは到底我慢できないと言ったのでそうなった。
黒髪は重力のままに男の肩口へ流れている。
その長い束の奥で、彫りの深い顔立ちが弱々しく微笑んだ。
なまえはその笑顔と、背後にある彼の狭い自室を一緒に見て思わずうつむいた。
彼の自室として割り当てられた物置。
他に空いた部屋を作ってやれるのにと思ってもオリジナルがそれを許していない。

無理に追いやられたこの狭いスペースが、スペアである彼の部屋であり、身を置く場所に決められていた。
なまえはこの頃、彼の扱いが気になって仕方がない。

とはいえチーム内での立場が高いとは言えない彼女には、スペアを取り巻く不仲と、他メンバーの無関心をどうにかできるほどの力が無いのだ。

「なまえ、どうかしたか?」

黙り込んだなまえの顔をスペアが覗き込んだ。

「いいえ。行きましょう」

下がりかけた眉を無理やり取り繕って踵を返した。




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