01

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生きているのに死んでいる。

ただ息をして、食事して、感じて。
切り刻んで。弄ばれて。
我々に何の罪がある?



どさり。

子供ばかりの部屋に、若い女性が乱暴に投げ込まれた。
腰まである銀髪の、小柄な女性だ。

そのひとは気を失っているようで、床に叩きつけられてもぴくりとも動かない。まるで死体なのではないかとさえ思ってしまう。
白い肌はなめらかで、注射の痕ひとつない。
しかし僕達と同じような被験服はおびただしい血で汚れていて。手首に巻かれたリストバンドはたしかに僕達と同じ、被験体であることを示していた。

部屋の隅にいた子供の一人が、驚愕の表情でその女性に近寄った。

「香耶……!?」

黒髪の……外国人の子供が、その女性の名前らしき単語を発しながら揺り起こそうとする。
髪をかきあげ、顔を確認して……それを遠巻きに見ていた僕にもその女性の顔が見えた。


美しい大人の女性だった。


忌まわしいマフィアの慰み者にでもされたか。おびただしい流血の痕は、全て右目からのものだ。眼球を抉り取られたようだ。
黒髪の子供がその女性を自分がもといた壁際に寝かせて、彼女を守るように周囲を威嚇する。

このときの僕は、その様子を見て、このふたりへの興味を抑え込んだ。
せいぜい仲の睦まじい者同士、傷を舐めあって震えていればいい。

そこにあったのは、少しの興味と、憐憫と……そして嫉妬だった。


「696番。出ろ」

次の実験は、とうとう僕のようだ。

僕はNo.696。
まだ、力も、名前さえ持たない、無力な子供だった。




手術台に乗せられ拘束された僕の前に運ばれてきたのは、まがまがしい気配のする、瞳孔の開いた赤い瞳の眼球だった。
あたりまえのように麻酔も無く、右目にメスを入れられる。白い白衣の研究者どもの意図に気付き、僕は戦慄を覚えた。

その目を、僕の右目に入れようというのか。

最後に己の右目で見た景色は、欲にまみれた赤だった。

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