02
月神香耶side
白い白衣の団体さんに右目を持っていかれました。
まったく。せめて払うもん払ってもらわないと困る。
ここに来るまでに至った経緯は今は置いといて。(←新選組を勢いで家出してきた)
私は、生命エネルギーを具現化した“死ぬ気の炎”の“夜”の炎の性質を利用し、あちこち瞬間移動して観光などするのが趣味だった。
友達のマフィアのボスとか、マフィアを取り締まる復讐者のボスとかの所に遊びに行くのにもよく使う。今回もそのつもりだった。
けれどもどういうわけか、今回のワープは失敗して……というか、誰かに呼ばれて、だと思うんだけど。こんな人体実験研究所みたいなところに飛んでしまったのだ。
何も知らない子供たちの命を弄ぶ連中なんか、ぶっ飛ばしてとっとと逃げようと思ったんだけど……女の勘が私にささやいたのだ。
もうちょっとここにいれば、絶対いいことあるって。
右目を持っていかれることよりいいことって、なんだろう。すっごく気になる。
それは、私が残った左目を見開いたとき、すぐにわかった。
「──香耶! 俺がわかるか?」
気が付くと、すごく焦った顔した、小学校低学年くらいの男の子がドアップで視界に飛び込んできた。
……この子。すっごく既視感がある。たしか、この子は……。
「まさか……薫君?」
私は驚いて半ば茫然とつぶやく。
それに薫君は、すこし安心した表情でこくりとうなずいた。
南雲薫。今、私が探している、幕末、新選組の転生者のひとりだ。
「なんでこんなところに……」
「誘拐された。たぶん死ぬ気の炎がちょっとだけ使えるから」
薫君の目線が周囲をぐるりと見渡した。周りにはやや遠巻きに私たちを眺める子供たちがいる。お揃いの病院服みたいな格好からすると、みんな薫君と同じような境遇なのだろう。
いったいなんなんだここはほんとに。誘拐した子供を改造して人間兵器でも作ってるんだろうか。
でも、今はそれよりも。
「薫君……君に会えてよかった」
「……うん」
この子を力いっぱい抱きしめることのほうが大事で。
かつて、幕末に生きた新選組。薫君は、少しの間だったけどそこにいた。江戸時代最後の戊辰戦争を生き残った薫君は、ほかのメンバーと同じく天寿を全うして荼毘に付されたが、この平成の時代にその頃の記憶を持ったまま生まれてきてしまったのだ。
「千鶴も転生してる」
「知ってるよ。新選組本部で保護してるからね」
「新選組あるのかよ……それじゃあまさか、土方とか沖田とかも生まれ変わってるのか」
「まぁね。薫君もおいで」
「どうせ嫌だといっても連れて行くつもりだろ」
「ふふ、わかってるじゃないの」
私は血まみれのまま笑った。