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沖田総司side
「健康だろうが余命いくばくだろうが、私のやることは変わらないよ」
「わかってる。それが香耶さんだもんね」
「それどういう意味?」
わかってるよ。
香耶さんの覚悟は、自分の命まで懸けられるほどのものだ。
僕にだって理解できる。だって僕も同じものを持っているから。
ならば、僕にできることは、彼女の前に立ちふさがる敵を斬って。無茶しそうになったら、横でそっと手をつないであげることだけ。
「健康な者には些細な病でも、君がかかると一大事になりかねない。君の身体は常に戦っている状態だからな」
「じゃあ、香耶さんが疲れやすかったり、眠ってばかりいたり、風邪が治りにくかったりしたのも……」
松本先生は難しい顔をしてうなずいた。
「……疲労と貧血の薬を出しておこう。今は病みあがりだから体力も落ちているし、絶対安静にな」
「絶対安静〜? 散歩もだめ?」
「私が許可を出すまで外出はするな。それから沖田君、君は絶対に彼女に無理をさせてはいかんぞ」
「え、僕が?」
僕が大事な香耶さんをどうにかする?
僕達を残し静かに部屋を出て行く松本先生。医療道具を抱えてふすまに手をかけたところで。
「夜のほうも、許可を出すまで控えておきなさいと言うことだ」
「ぶっ!」
「ええっ!?」
そっち!?
去り際に爆弾を落としていったのだった。
確かに覚悟するって言った。
例え香耶さんが寝たきりになったって、僕が一生面倒見る。
彼女の病を治せるなら、僕はなんでもする。
香耶さんがそうしてるように、僕だって幸せになる努力をするって決めた。
けれど。
「……香耶さん」
「あはは、まだ暫らくは禁欲生活だね?」
「うそだ! 僕が今までどれだけ我慢してきたと思ってるんだよ」
無理やり恋仲になって一年。やっと想いが通じ合って三日目。
「私からはごめんとしか言いようが無いよ」
「……べつに香耶さんは悪くないけどさ…」
僕はかくりとうなだれる。
ここに来て、思いもよらない試練が待ち受けていることに気づいたのだった。