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(ハワイの海と湘南の海は違う!/立海all)

3月に入って初めての登校日。
この日、朝からいつメンのグループチャットは忙しなく動いていた。
仲良しの彼らがこうしてやり取りをするのは決して珍しいことではなかったが、一つだけいつもと違う点があった。それは、メンバーにゆめこが含まれていないということだ。

彼らは意図してゆめこを抜いた8人のグループチャットを作っていた。グループ名は"ゆめこを励まそうの会"である。ちなみに作成者も命名者もゆめみだった。

ゆめこが毛利にフラれてからおよそ半月の時が流れ、その事実はすっかりいつメンの間で広がっていた。
フラれてすぐの頃に比べれば大分メンタルも安定してきたゆめこであったが、いまだに本調子ではないようで、時折思い出したように悲しそうな表情を浮かべることもあった。そのことに目敏く気付いたゆめみは、期末テストも終わったことだしみんなで集まってゆめこを元気付けよう!と企てたのであった。

とは言え休日に全員の予定を合わせるのはなかなか難しい。そのため彼らは昼休みに学食でみんなで集まろうと計画を立てていた。

『三色ゼリーどうやって確保する?』
『俺、食堂のおばちゃんにツテあるから中休みの内に頼んでみるぜい』
『では、ちらし寿司は私と仁王くんに任せて下さい』
『プピーナ』

今日は3月3日。
ひな祭り限定の学食メニューを狙うゆめみがみんなに問いかけると、丸井、柳生、仁王の順で返事が来た。
マンモス校である立海では限定メニューは非常に手に入りにくいので、サプライズで用意出来たらきっとゆめこも喜ぶはず、とゆめみは考えていた。

その後、真田とジャッカルが席を取っておくと名乗り出て、柳とゆめみと丸井がゆめこを食堂に連れていく係となった。全員の役割分担が決まったところで、入院中のため参加出来ない幸村が『みんな頼んだよ』と気合いを入れ、そのことでさらに彼らの団結力に火が点いた。



時は過ぎ昼休み。
昨日の内からゆめみに「明日は学食にしない?」と提案を受けていたゆめこは、昼休みに入るなり席を立った。
ふらりと出て行きそうなゆめこを見て、丸井は慌てて後を追う。普段はのんびりしているくせに、ゆめみが絡むとゆめこは途端にフットワークが軽くなる。

「ゆめこ、今日学食だろい?」
「え、どうして知ってるの?」

丸井に声を掛けられたゆめこはきょとんと目を丸くした。丸井は「まぁまぁ細かいことはおいといて」と前置きをすると、

「俺も一緒に行ってもええ?」

と尋ねた。

「うん、もちろんいいよ。あっ、ゆめみと約束してるんだけど」

とゆめこが言いかけたところで、「ゆめこ!」と声を掛けられ二人は顔を上げた。教室の前には隣のクラスのゆめみと柳が立っていた。ゆめこ達のクラスより早く終わって待ってくれていたらしい。当たり前の顔をしてゆめみの隣に立っている柳に、ゆめこは不思議そうな顔をする。

「珍しいね、蓮二お弁当忘れたの?」
「ああ、たまには学食も良いかと思ってな」
「ふーん」

いつもはお弁当派なのに。どうせゆめみに合わせたんだろうな、とゆめこは心の中で自己完結してそれ以上は詮索しなかった。

4人で仲良く学食に向かう途中、丸井は「そういえば」と思い出したように口を開いた。

「昨日のスイーツ特集の番組見た?」
「私見てないなぁ」
「私もー」
「なかなか興味深い内容だったな」

丸井が話題を振ると意外にも柳だけが番組をチェックしていて、3人は「えっ?!」と声をハモらせて彼を見た。柳としてはスイーツ好きのゆめみのために情報収集をしていたに過ぎないが、3人の突き刺さるような視線に珍しく居心地の悪い顔をしている。
なんとなく彼の目的に気付いたゆめこは「蓮二もかわいいとこあるね〜」なんて冷やかし、4人の間で笑いが起きた。

そうしてワイワイ言いながら歩みを進めていると、何かに気付いたゆめこが「あ」と声を漏らして立ち止まった。

急に足を止めたゆめこに、3人は不思議そうに彼女の視線の先を辿る。するとそこには毛利の姿があった。
毛利は璃々果と一緒に歩いていた。
偶然なのか、はたまた・・・。そこまで考えてゆめこはぐっと唇を噛み締めた。足に根が生えたようにそこから動けなくなってしまったゆめこ。

すると、ふと顔を上げた毛利と璃々果が、そんなゆめこの存在に気が付いた。ばちりと目が合う。
ゆめこの顔を見て口を開きかけた璃々果に対し、毛利はぷいと視線を逸らすと

「・・・行こかや」

と璃々果に声を掛けた。
そしてそのまま背中を向けて立ち去ってしまった二人を、ゆめこは呆然として見送る。

「は?もしかして元カノとより戻した訳?」

真っ先に口を開いたのは丸井だった。その声色にはじゃっかんの怒気が含まれている。フラれた理由は自分に非があったからだと思い込んでいたゆめこも、丸井のその言葉に動揺を見せた。

もしかして璃々果さんのこと好きになっちゃったの?だから私はフラれたの?

最悪な事態を思い描き、ゆめこの肩が小さく震える。彼女の異変に気付いた柳は「丸井」と少し強めの口調で彼を律した。名前を呼んだだけだったが『口を慎め。気を遣え』と言われているような気がして、丸井は慌てて口を噤む。

とっくに毛利の姿は見えなくなっていたが、ゆめこは彼がいなくなった方をずっと見つめていた。
せっかく半月かけて落ち着いてきた感情がぶり返してくるようだった。2回もフラれたのならもう潔く彼のことは諦めるべきなのか。だとしたらせめて仲の良い後輩に戻りたい。そんな淡い期待すら全て無に還されたような気持ちになった。

なにも無視まですることないじゃん。

ひどく落ち込んだ顔で佇むゆめこに、ゆめみはたまらず後ろから抱きしめた。

「ゆめこ、大丈夫だよ」
「うん、ありがとう」

そんな彼女の優しさで、ゆめこはなんとか自分を保つことが出来た。
しんみりとした顔のまま学食へ足を踏み入れると、既に席を取っていた真田、柳生、仁王、ジャッカルが手を降り合図を送る。

「あれ?みんないる」
「ふふふ。実はね、ゆめこに内緒でみんなで集まろーってことになってたんだよ」
「えっ、そうなの?なんで??」
「今日はひな祭りでしょ?学食には限定メニューも出るし、それを食べてゆめこに元気になって欲しかったの」
「そうだったんだ・・・」

と言うことは、ブン太くんと蓮二も偶然じゃなかったんだ。
そのことに気付き、ゆめこはみんなの優しさに涙が出そうになった。それと同時に申し訳ない気持ちにもなる。

みんなに心配かけてる場合じゃないのに。

ついさっき毛利と遭遇したことでゆめこはまた振り出しに戻ってしまったので、余計にその気持ちは大きくなった。

「みんな、ありがとう」

そう言いながら席に着いたゆめこはどこか落ち込んだ顔をしていて、事情を知らない4人は何があったんだ?と目配せをする。ゆめみ、柳、丸井は何と説明するべきか悩んで口籠もっており、気を遣われている空気を読んだゆめこは「実はさ」と自ら口を開いた。

「ここに来る途中でね、寿三郎さんが元カノさんと歩いてるとこ見ちゃって、落ち込んじゃったの」

そう素直に吐露するゆめこに、全員が心配そうな目つきに変わる。"ゆめこが失恋した"というざっくりとしたことしか知らない真田だけが「ん?」と訳が分からないといったリアクションをしていた。

「あっ、でももう大丈夫!なんかみんなの顔見たら少し落ち着いたっていうか・・・ホッとしたから」

ゆめこは慌てて笑顔を取り繕うと、珍しく早口でそう言った。それに合わせるように、ゆめみは「そうだ!」と明るい顔で手を叩いた。

「今日はゆめこのために特別メニューをご用意しました〜!数量限定ひな祭り三色ゼリーとちらし寿司だよ。みんなで食べよ?」

ゆめみがそう言うと、他のメンバーは隣のテーブルに置いていた人数分のゼリーとちらし寿司を持ってきて並べ始めた。桃色、黄色、黄緑色。春を感じる色鮮やかな食事が目の前に広がり、ゆめこはぱちぱちと瞬きをする。

「すごいね、これ手に入れるの大変だったんじゃない?」
「まぁな!でも俺らが本気出すとこんなもんだろい」
「このくらい楽勝ぜよ」
「我々に不可能は無いからな!」

自信満々に答える丸井、仁王、真田に、ゆめこは「あはは、たしかに」と言って笑った。やっと自然体な笑顔を見せてくれたゆめこに、みんなは途端に安堵したような表情になった。
毛利とのことで落ち込んでいることに変わりはないが、それでも幾分が気分が楽になったように感じる。持つべきものは友達だ。私には頼もしくて優しい友達がこんなにたくさんいる。そう思うと嬉しかった。



「なぁなぁ、もうすぐ春休みだしさ、月末にでもみんなでパーっと遊びに行かねぇ?」

華やかな食事を楽しんでいる途中、丸井は思い付いたようにそう提案した。
今月末から待ちに待った春休みが始まる。テストも終わったばかりで解放感に満ちている面々は、声を揃えていいねいいねと同調する。
しかしそんな中ゆめこは「月末かぁ〜」と悩んだように視線を宙に彷徨わせた。

「予定でもあるんか?」
「うん。実はハワイにね、行くことになってて」

仁王の質問にゆめこがそう答えると、一同は「ハワイっ?!」と大きな声を上げたが、ゆめみと柳は既に知っていた情報だったのか特に反応もせずその様子を客観的に見ていた。

春休みに入ってすぐゆめの家は3泊5日でハワイに行くことが決まっていた。
父である賢造の次回作がハワイ神話をモチーフにしているため、ホノルル市内のホテルで出版社主催のイベントが行われるのだ。
親族招待枠によりフライトチケット代とホテル代もかからないし、ゆめこも春休み中ということで、今回は母と共に同行することになっていた。

そしてそれは両親による愛する娘へのプレゼントでもあった。最近ゆめこが元気がないことを父は大層心配しており、このハワイ旅行が良い気分転換になるのでは?と考えたのだ。学校で何か嫌なことでもあったんじゃないかと彼は本気で物案じていた。

もちろん常日頃から十分にコミュニケーションが取れている母は、ゆめこの落ち込みが毛利と別れたことによるものだと知っていたが、彼女が賢造にそれを伝えることはなかった。もしうっかり話してしまった日には、憂鬱が一つ増えるだけだ。
『ゆめこに彼氏?!しかも一方的にフラれただと?!』と顔を真っ赤にして怒り毛利家に乗り込まんとする勢いの彼の姿が安易に想像できて、母は口を貝にした。同じようなリアクションをしそうな拓哉も仕事が忙しいため不参加で、彼女は内心ホッとしていた。

「お土産期待してるぜい」
「あはは、何がいいかな?やっぱり食べ物?」
「断然お菓子だろい!あ、パンケーキミックスとかも捨てがたいなぁ〜」
「私はBBWのハンドクリームが良いー!」
「俺はコナコーヒーが嬉しいぜ」
「私はLUPICIAのハワイ限定フレーバーが気になりますねぇ」
「うむ。俺はハワイアンな置物を頼む」
「ほう、ティキのことか。ならば俺もそれを頼もう」
「オッケー!雅治くんは?」

一人だけだまんまりを決め込む仁王に、ゆめこはすかさず声を掛ける。彼は珍しくうーんと悩ましげに腕を組んでいた。

「おまんらよくポンポンと出てくるのう」

次々と欲しいものを頼むメンバーを見て、仁王は本当に何が良いか分からないといった表情を浮かべていた。
そんな彼を見て、みんなも『仁王には何が良いだろう?』とそれぞれ考えを張り巡らせる。

「クッキーとかどうだ?」
「雅治くん甘い物嬉しい?」
「嫌いという訳ではないがのう」
「ではナッツなんてどうでしょう」
「雅治くんナッツ好きなの?」
「まぁ、普通・・・じゃな」
「じゃああれは?ヌードトランプ!」
「はいブン太くん最低ー。却下」

ウケ狙いで下ネタをぶち込んでくる丸井に、ゆめこはむすっとした顔を向ける。すかさず「なんだそれは?」と首を捻る真田に、柳は「弦一郎、知らなくていいことだ」と耳打ちした。ゆめみは苦笑を浮かべている。
最初にジャッカルが提案したクッキーが一番無難か、とゆめこが思っていると、

「あ!Tシャツなんてどう?」

とゆめみが閃いたように手を叩いた。

「現地でしか手に入らないデザインもあるし、良い考えだな」と柳が補足すると、仁王も「Tシャツか」と今までで一番ストンと腹に落ちたような反応を見せた。

雅治くんに合うTシャツかぁ。
お洒落が好きなゆめこであったが、メンズファッションにはそこまで詳しい訳ではない。ちゃんと選べるかな?と不安になったゆめこであったが、ふととある人物の顔を思い浮かべてパッと明るい顔になった。

「大ちゃんにでもアドバイスもらって選んでみるよ」

ゆめこがそう言うと、みんなの頭上にはクエスチョンマークが浮かんだ。『大ちゃんとは?』そう顔に書いてある。
事情を知ってるゆめみと柳だけが「そっか」と納得したような顔つきになった。

「たしか、大介くんも一緒に行くんだっけ?」
「そうそう、ハワイのこと言ったら飛び付いてきてさ」

今回のゆめの家のハワイ旅行には従兄一家の3人も参加することになっていた。招待枠には余裕があるし、ちょうど春休みのその期間に、四天宝寺中は校舎の大規模修繕工事を行うらしく部活もオフなのだとか。
『タイミングばっちりやん!』と大喜びしていた従兄の顔を思い出し、ゆめこは思わずふふっと笑みを溢す。
"大介"とやらが従兄だと説明を受けた丸井と仁王はどこかホッとしたような顔をしていた。

「でも大介くんに任せて大丈夫かな?」

彼のお調子者な一面を知っているゆめみは、彼の場合「おもろそうやん」とふざけて変なTシャツを選びかねないな、と思った。まったくゆめみに信用されていない従兄にプッとゆめこは吹き出す。しかしすぐに、「大丈夫大丈夫」と自信満々に言った。

「大ちゃんがダメそうでも、白石くんがいるし。白石くんセンス良さそうじゃない?」

ゆめこの言葉に場がしん、と静まり返る。ゆめみだけが「あはは、たしかにー」とにこにこ笑っていた。

「あの、ちょっと。ゆめこさんいいですか?」

わざとらしい敬語で丸井が手を上げる。ゆめこは「なに?」と丸井に向き直った。

「え、なに?白石も一緒なの?どういうこと?」
「なんか大ちゃんが誘ったんだってー。招待枠には余裕あるし、あの二人親友だからさ」

「私とゆめみみたいだよねー」なんてあっけらかんと笑うゆめこに、丸井は「は?無理無理無理!」と立ち上がった。

「どしたの?突然」
「いやいや、3泊5日白石と一緒とかずりー・・・じゃなくて、危ないだろい?!」
「危ない??なにが??」

本気で訳が分かっていないゆめこは眉を顰めて丸井を見る。『ずるい』とはっきり言った丸井に全員呆れまなこになっていたが、なんとなく二人のやり取りに口を出せずみんな黙って見守っていた。

「青い海。青い空。きらめく砂浜。こんな条件が揃ったらぜってー良い雰囲気になっちゃうだろい」
「ん?海ならうちらもよく行くじゃん」
「ハワイの海と湘南の海は違う!」
「あはは、同じ海だって」
「水着禁止な」
「ハワイで水着禁止はナイわ〜」

けらけらと笑っていなすゆめこに、丸井は「まじでありえねぇ」とむっと唇を突き出す。なんとなく丸井の言いたいことが分かったゆめこは「てかさぁ」と口を開いた。

「白石くん相手にそんな心配することないでしょ。ブン太くんじゃあるまいし」
「・・・俺をなんだと思ってんだよ」

白石の気持ちに一切気付いていないゆめこは「白石くんレベルになるとね、私の水着姿見たくらいじゃなんとも思わないから〜」とへらへら笑いながら言ってのけた。
美しいビーチが広がろうが、水着になろうが、彼が自分とどうこうなろうと思う訳がない。
白石のことを"イケメンモテ男くん"と認識しているゆめこは、丸井が想像するような可能性は微塵も無いと決めつけていた。

それからしばらく丸井の説得は続いたがゆめこがそれに応じることはなかった。彼の機嫌は悪くなる一方で、空気を読んだジャッカルが「そういえばさっきの話なんだけどよ」と二人の間に割って入った。

「月末は無理でも、その前にみんなで遊びに行かねぇか?」

ジャッカルの提案に、ゆめこと丸井は目をぱちくりさせて彼を見た。『ジャッカルくん、ナイス!』と思ったゆめみがここぞとばかりに、「はいはーい」と手を挙げる。

「それなら来週の日曜日はどうかな?」
「第3日曜日で練習もオフですしね、私は空いていますよ」
「俺も特に予定は無いな。弦一郎はどうだ?」
「俺も空いている!」
「俺も暇しとるぜよ」
「ちなみに俺も空いてるぜ」

ゆめみの提案に、柳生、柳、真田、仁王、ジャッカルが順に答えていき、最後に彼らは揃ってゆめこと丸井を見た。不毛なやり取りをしていたゆめこと丸井はきょとんとしながらも声を揃えて「空いてる、けど・・・」と呟く。

「じゃあ決まりだねっ。ゆめこはどこに行きたい?」
「えっ、私??」

そうだなぁ、と考え込むゆめこに、ゆめみはキラキラとした瞳で答えを待つ。みんなで遊びに行くのは失恋の悲しみを忘れさせてくれる良いきっかけになるかもしれない、と彼女は思ったのだ。

付き合っている時は自らを"毛利先輩応援隊"などと名乗り毛利の肩を持ってきてたゆめみだったが、彼が一方的に別れを切り出し、尚且つ先程"元カノとヨリを戻したかもしれない疑惑"が浮上した今、ゆめみは一層毛利に対して負の感情を抱いていた。
そんなひどい男のことは忘れて、いつもの元気なゆめこに戻って欲しい。と、ゆめみは心から願っているのだ。

そんな彼女の気遣いに気付いていないゆめこは「どこがいいかなぁ」と頭を悩ませる。
一部始終を見ていた仁王はゆめみの真意に気付き、

「遠慮せんと、言ってみんしゃい」

とゆめこの頭にポンと手を置いた。

「うーんと、じゃあ・・・ネズミーランドとかどうかな?」
「おっ、いいじゃん!俺行きたい!」
「ねずみーらんどだと?それはどこぞの桃源郷だ?」
「遊園地のことだ弦一郎、良いのではないか、2年生最後の良い思い出になるだろう」
「じゃあネズミーランドで決まりだね!」

自分の提案に意外とみんな乗り気で、ゆめこは安心したようにホッと息を吐く。隣に座っていた仁王に「良かったのう、みんなで行けるぜよ」と声を掛けられ、ゆめこは「うん!」と満面の笑みを彼に向けた。

「楽しみだろい!赤也にも声掛けてやるか?」
「期末の結果に問題が無ければ補習もないはずですが・・・」

眼鏡をくいっと上げながら柳生が言うと、みんな「あっ・・・」と途端に何かを察したような顔になった。彼が補習を免れる訳がない。

「赤也が補習の確率、」
「皆まで言うな、柳」

ジャッカルは憐れみに満ちた顔ですかさずツッコんだ。「・・・たるんどる」真田が小さく呟き、ゆめこは心の中でそっと合掌するのだった。





(221004/由氣)→172

ハワイ楽しみですねぇ




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