095
(その人とうまくいくといいね/丸井)
クラスが隣同士というのは本当に最高だな、とゆめこは思った。
7月末の週末。
彼女は今、一泊二日の林間学校に参加していた。
今年は幼馴染のゆめみと柳と同じ班になれた。
林間学校は毎年二クラスずつ別れて、それぞれ別の場所で開催されるのだが、I組とJ組は合同クラスであった。
クラスを跨いで班を決めていいというルールも継続されていたため、ゆめこ達は迷うことなく班を組んだ。
おかげで今年の林間学校は朝からずっと楽しい。
もちろん去年も楽しかったのだが、それとはまた違った楽しさだった。
今は班ごとに別れてカレーを作っている最中だ。
今年もゆめこは炊事係になったので、みんなが鍋や道具を準備してくれている間、野菜等の材料を取りに行った。
ちなみに柳は班長、ゆめみは保健係だ。
「おまたせ〜」
戻って来るなり、ゆめこはドンと調理台に箱ごと材料を置く。
みんなが中身を覗き込んだ。
さて、役割分担を決めよう。という流れになったので、ゆめこはもう一人の女子を見た。
班は男女三人ずつで構成されているので、ゆめことゆめみの他にもう一人女子がいるのだ。
「心乃ちゃんてお料理とかする?」
ゆめこはにこにことその人物に話しかけた。
彼女は丸井の恋人の"佐知原 心乃"。
班決めの際、ゆめこは当然のように丸井を誘ったのだが、それならば彼女の心乃も誘うべきだと言う話になり、必然的に同じ班になった。
いつも一緒にいる星梨は、I組にいるというギャル友達に混ぜてもらうと言っていたので、割とすんなり決まったことだ。
ゆめこに話し掛けられた心乃は、控えめにはにかんでこくりと首を縦に振った。
「心強い!」ゆめこは嬉しそうに手を叩き、
「じゃあ心乃ちゃんとブン太くんで野菜切ってもらってもいい?」
と二人を見た。
心乃は「うん」と快諾した。
ゆめみと柳にはお肉の下ごしらえをお願いして、四人が持ち場についたことを確認すると、ゆめこは「よし」とほくそ笑んだ。
二組ものカップルをサポート出来て、彼女は達成感を得ていたのだ。
正確に言えばゆめみと柳はカップルではないのだが、ゆめこは二人の恋路を応援しているので、なるべく二人きりにさせてあげたいと思っていた。
思惑通りに事が進んだな、とゆめこが満足していると、
「で、俺らはなにやんだ?」
取り残された男子が口を開いた。
彼は同じクラスの宮治という生徒で、ゆめことは元々顔見知りであった。
一年の時仁王と同じクラスであった彼とは、海原祭のときゆめこが射的をしに行ったタイミングで出会っていた。
お互い自己紹介をした訳でもないし、友達と言うほどでもない関係だったが、海原祭の時から仁王とゆめこの仲を勘繰っていた宮治が、
「仁王最近どうなの?元気でやってる?」
なんて頻繁に聞いてくるもんだから、その流れで会話を交えるようになったのだ。
最初ゆめこは「何で私に聞くの?」ときょとんとして聞き返していたが、何度かそのやり取りを繰り返す内に、
「宮治くん、どうしてそんなに仁王くんのことが気になるの?好きなの?」
なんてゆめこは疑うようになっていった。
「は?!ちげーし、そんな趣味ねーよ!」と心底嫌そうな顔で反論する宮地のリアクションが面白かったのか、ゆめこの中では宮治は仁王に片想い中という設定にしておいた。
もちろん宮治をからかうためのおふざけの一つだ。
そんな彼はゆめこにとって話しやすいタイプの人間なのか、班決めの際「男子が一人足りない!」という状況になった時に、ゆめこから声を掛けたのだ。
「宮治くん班決まった?決まってないよね?私と同じ班が良いよね?」とゴリ押しされ、宮治は首を縦に振ったのだった。
「私達はお米!お米炊こ」
と、ゆめこは宮治に飯盒を持たせた。
調理場のすぐ横には焚き火台がいくつも並んでいて、自分達で薪を入れながらお米を炊くことができる。
最近はもっと便利なレジャーグッズがあるのだが、林間学校はあくまで学習の一環なので、生徒達に経験を積ませるためにとあえてアナログな手法が推奨されていた。
とは言え火起こしから始める訳でもないし、かまどじゃないだけまだマシである。
お米と水を飯盒に入れ、焚き火台に乗せる。
「火、もう少し強い方がいいんじゃない?」
"美味しい炊き方" と書かれたしおりを片手に持ちながら、ゆめこは宮治に指示を出した。
彼は軍手をはめたその手で、ぽいぽいっとテキトーに薪を放り投げる。
するとわっと火力が強くなった。
「え?これ強すぎじゃない?!」
「水ぶっかけるか?」
「そんなことしたら全部台無しになるわ」
「あ〜!でもめっちゃ噴きこぼれてんじゃん」
「えっ、うそ!」
「やばいやばい」そう繰り返しながら、二人は焚き火台の前でうろちょろする。
しかし成す術なくテンパっている自分達をふと客観的に見たら何だか笑えてきて、二人は「まじか、終わった」と口では言いつつも、けらけらと腹を抱えて笑っていた。
そんなゆめこ達を遠くからじっと見つめている人物がいた。
丸井だった。
彼は野菜をまな板の上に乗せ、包丁を握ったまま、けれども視線はゆめこ達に向けて、そこに突っ立っていた。
随分楽しそうだな。と、丸井はゆめこ達の様子が気になっているようだった。
丸井がゆめこに告白したあの日から、既に3ヶ月もの月日が経とうとしている。
ゆめこにフラれてから二週間後くらいに告白してくれた心乃と付き合い始め、自分なりに新しいスタートを切ったつもりでいたのに、いまだにこうしてゆめこが他の人と仲良くしているところを見ると、胸がもやもやして不快な気持ちになってしまう。
諦めたつもりでいたのに。
可愛い彼女もいるのに。
いつも何か満たされない。
この胸のつかえは一体いつになったら払拭されるんだろう。
この3ヶ月間、丸井はずっとそんなことを考えながら生活していた。
「ブン太くん、よそ見してると危ないよ」
その時、隣にいた心乃に話しかけられ、丸井はハッと我に返った。
隣を見ると、心乃がにこりと笑っていた。
そうだ、俺は今この子と付き合ってるんだ。
丸井はそう自分に言い聞かせた。
「わりぃ」丸井はそう言ってへらりと笑うと、再び野菜に包丁を入れた。
「おもしろい切り方だね」
すると心乃は丸井の手元を見てそう言った。
薄切り、くし切り、みじん切りと三種類の大きさに切られた玉ねぎ。なぜわざわざ切り方を変えているのか、心乃には分からなかった。
「ああ、これか?こうすることで火の入り方が変わって、味も食感も良くなんだよ。みじん切りと薄切りは先に炒めてルーと一体化させると、ぐんとコクが出るんだぜ」
「へ〜!」
「ちなみくし切りは一番最後に入れる!これで玉ねぎの食感も楽しめるって訳だ」
「なるほどー!ブン太くん、物知りなんだね!」
「あー、まぁ・・・、全部ゆめこの受け売りなんだけどな」
「えっ」
「去年の林間学校も同じ班だったから、その時教えてもらったんだよ。ゆめこの作ったカレーが超うまくてさぁ!」
去年食べたカレーの味を思い出したのか、丸井は目を輝かせてそう言った。
しかし言ってしまった後でハッとした。
目の前の心乃が、浮かない顔をしている。
うまいフォローの言葉も思いつかず、丸井は沈黙した。
多分、いや、きっと。
心乃は気付いている。
自分の中に残っている、ゆめこに対しての未練。
全て知った上で一緒に居てくれているのだ。
こんな健気な彼女を傷つけてまで、俺は一体何をやっているんだろう。と、丸井は自己嫌悪に苛まれた。
心乃はすぅと小さく肺に空気を送ると、
「じゃがいもは私が切るね」
そう言って、にこりと笑った。
それからみんなで協力してカレーを完成させた。
心配だったお米も上手に炊き上がっていて、蓋を開けてお米が立っているのを見た時、ゆめこと宮治は思わずハイタッチをして喜んだ。
そうしてあっという間に時間は過ぎていき、出来上がったカレーをみんなで食べて、後片付けをした後は、いよいよ林間学校一番のメインイベントでもあるキャンプファイヤーの時間となった。
このキャンプファイヤーには恋愛に纏わるジンクスが数多く噂されている。
去年はその辺の話題に疎かったゆめこも、今年は違った。
彼女自身も恋愛を意識するようになったことで、今までは聞き流していたような話題も自然と耳に入ってくるようになったのかもしれない。
そのためジンクスの内容をそれなりに理解していたゆめこは、一体誰とキャンプファイヤーを見るべきかずっと悩んでいた。
数あるジンクスの中で、最もゆめこの印象に残っていたのは"キャンプファイヤーを一緒に見て愛を語り合ったカップルは別れない"というものだった。
ゆめみと柳が愛を語り合うかは別として、どうしても二人きりにしてあげたいと思っていたゆめこは、「先約があるの」と嘘を吐き、二人から距離を取った。
そうして行く当てもないまま、ゆめこはみんなから少し離れたところに腰を下ろした。
座るにはちょうどいいサイズの岩があったのだ。
遠くの方で、音楽が鳴り始める。
そういえば去年もろくにキャンプファイヤー見れてないんだった。つくづく縁が無いな、とゆめこはふっと小さく笑った。
近くにあった木の枝を手に取り、ゆめこは座ったまま地面に絵を描き始める。
孤独ではあるが、それよりも柳に協力出来ていることの方が嬉しかった。
するとその時。
「ゆめのさん?」
名前を呼ばれ、ゆめこは顔を上げた。
ザッと木を掻き分け、一人の男子生徒が近付いてくる。
こんな離れまで何しに来たんだろう?
ゆめこがそう思っていると、
「ゆめのさん、こんなところで何してるの?」
彼はあっという間にゆめこの目の前までやって来てそう尋ねた。
地面に描いていた絵に彼の影が重なり、ゆめこはそっと木の枝を手放し、彼を見上げた。
目の前の少年に見覚えはない。
I組の生徒だろうか。
知らない相手に事情を話すのも気が引けて、「ちょっとね。あなたは?」とゆめこはすぐに聞き返した。
「俺は、ゆめのさんがこっちの方に歩いていくのが見えたから、追いかけてきたんだ」
「私を?」
そう聞き返して、ゆめこはそこで初めて違和感に気が付いた。
どうして私の名前を知っているんだろう。
するとそんなゆめこの疑問を察したのか、
「よくゆめださんに会いにI組に来るよね?かわいいなぁって思って、ずっと見てたんだ」
と、彼は口にした。
ゆめこはぽかんとしている。
しかしすぐに「キャンプファイヤー、良かったら一緒に見ない?」と言われ、彼女はハッとした。
正直その誘いを受けるのは微妙だな、と感じたゆめこは「えっと」と言葉を詰まらせた。
彼が何かしらのキャンプファイヤーのジンクスにあやかろうとしているなら、期待には添えないと思ったからだ。
何か良い言い訳はないだろうか。
ゆめこがそう思考を巡らせていた時だった。
「ゆめこ!」
耳馴染みのある声で名前を呼ばれ、彼女はそちらに目を向けた。
丸井が立っている。
その後ろを心乃が息を切らしながら追いかけてきていて、ゆめこはどういう状況?と首を傾げた。
丸井はゆめこのそばまでやって来ると、彼女の腕をぐいと掴み上げた。
「こいつとキャンプファイヤー見るの、俺だから」
はっきりとした口調で、丸井はそう言った。
ちらりと横目に映った心乃が泣きそうな顔をしていて、ゆめこは困惑して二人を見比べた。
「あの、えっ?」
「そういう訳だから、ここは譲れねぇ」
「いや、あの」
「そっか。そういうことなら仕方がないね」
「ちょっと」
勝手に話を進める丸井と男子生徒に、ゆめこはどうにか割って入ろうと口を開いたが、どれも全部スルーされてしまった。
残念そうな面持ちで去って行く男子生徒。
どういうこと?!とゆめこは呆然として彼の背中を見送っていたが、その時「ぐすっ」という鼻をすする音が聞こえてきてゆめこは慌てて顔を上げた。
ついに心乃が泣き出してしまっていた。
「えええええ何事!?てかブン太くん、なに心乃ちゃんのこと泣かせてるの!」
とゆめこはひどく狼狽した。
しかし当の本人たちは冷静に現状を受け止めているような表情をしている。
「分かってたけど、やっぱり辛いよ」
「悪ぃ、心乃。俺最低だ」
「うん、本当に最低。最低過ぎて、百年の恋も覚めちゃった」
泣きながら、けれども無理矢理口角を上げて心乃が笑う。
「ゆめこちゃんのことが好きなブン太くんなんて、私全然好きじゃない」普段おっとりしている彼女にしては、珍しく強い口調だった。
自分の名前が出たところで、ゆめこは「ん?!」と目を見開く。
この二人は今別れ話をしているのだろうか?
まったく状況が分かっていないゆめこは、焦って二人を見比べた。
「ねぇ!ごめん、待って!私にも説明して!」
そしてついに、ゆめこはそう言って割って入った。
丸井と心乃が揃ってゆめこに目を向ける。
「悪ぃ、ゆめこ。俺やっぱりお前のこと好きだわ」
「はい?」
「すぐに断ち切れると思ってたけど、全然無理だった。仁王と手繋いでだことも、毛利先輩といちゃいちゃしてんのも、宮治と仲良く話してんのも、全部全部許せねぇんだよ!」
初めて聞いた丸井の本音にゆめこは「え」と言葉を失う。
それから丸井は全て包み隠さず、これまでのことを話し出した。
フラれた後、心乃に告白されて、ゆめこを忘れるために付き合い始めたことも。
付き合ってからも、ゆめこのことばかり考えてしまっていたことも。
その間、心乃はずっと黙って聞いていた。
「そんなの、自分勝手にも程があるよ。ブン太くん」
心乃の気持ちを考えたら、ゆめこはそう非難せずにはいられなかった。
しかし、意外にもそれに反論したのは心乃だった。
「分かってたの」彼女はそう口を開いた。
「告白してOKもらった時は浮かれてて気付かなかったけど・・・、段々ブン太くんの視線の先にはいつもゆめこちゃんがいることに、私気付いてた。でも別れたくなくて、ずっと知らんぷりして、いつか振り向いてくれたらいいなって思ってたけど、もう限界だよ」
「心乃ちゃん・・・」
「今もね、ゆめこちゃんの後を彼が追っていくのを見かけたら急に走り出して行っちゃって・・・。私止めたんだけど、ブン太くんってば『ごめん、もう自分の気持ちに嘘はつけない』だってさ。嫌になっちゃうよね」
あはは、と無理に笑いながら、心乃は手の甲で涙を拭う。
ゆめこは、まさか自分が火種となって、彼女にこんな苦しい思いをさせていたなんて、とショックを受けた。
毎日バカみたいに何も考えずに笑っていた自分が恨めしく思えてくる。
心乃にどう声を掛けるべきか。
ゆめこは瞳を揺らしながら彼女を見た。
しかし、ゆめこが口を開くより先に心乃は「幸せになってね」と呟くように言った。
それはゆめこと丸井、二人に向けて放った言葉のように聞こえた。
体を半身傾け、今にも去って行きそうな彼女に、ゆめこは慌てて「待って!」と声を掛けた。
ゆめこには言いたいことがあった。
"幸せになってね"
自分達に向けられたその言葉を、ゆめこはそのまま流すことは出来なかったのだ。
「わ、私!すす好きな人がいるの!」
突然そう暴露したゆめこの声は上擦っていた。
丸井と心乃がきょとんとして、ゆめこを見る。
「だから、あの、えっと・・・。ブン太くんの想いに、私は応えることが出来ません!」
バッと頭を下げ、「ごめん」と謝罪するゆめこ。
彼女は心乃にも、そして自分にも、嘘を吐きたくなかったのだ。
しーんと沈黙が続く。
しかし「ぷっ」と心乃が噴き出したことで、沈黙は破られた。
ゆめこは目を丸くして顔を上げる。
「残念。ブン太くん、フラれちゃったね」
「なっ・・・」
「ちょっといい気味、かな?」
「心乃お前なぁ!」
くすくすと笑いながらそんなことを言う心乃に、丸井はむっと眉根を寄せる。
しかしすぐに気が抜けたように「はぁ」と盛大なため息を漏らした。
「ゆめこちゃん、その人とうまくいくといいね」
「えっ?あ・・・うん。ありがとう」
心乃はゆめこにそう声を掛けると、今度こそくるりと踵を返し、走り去っていってしまった。
後にはゆめこと丸井だけが残され、ゆめこはちょっと気まずさを感じた。
丸井はドカっとゆめこの隣で胡坐をかいた。
丸井の視界に、先程までゆめこが描いていた絵が移り込む。
懐かしいな、と丸井は思った。
あれは入学してすぐの頃だったか。
ゆめこに教科書を貸したら、よく分からない動物の落書きがされて返ってきたことがあった。
今目の前に描かれているのとまったく同じ奴だ。
何とも言えないゆるキャラっぷりに、自然と丸井の頬も綻んでいく。
「ずっと気になってたんだけどよ」
と、丸井が沈黙を破る。
ゆめこの肩がびくりと跳ねた。
「こいつ猫?それとも犬?」
何を言われるのかと身構えていたゆめこは、拍子抜けしたようにきょとんとする。
しかしすぐにむっとして唇を尖らせた。
「クマだもん」彼女は短くそう告げた。
「はっ?クマぁ?だってこいつ耳三角じゃん。普通クマって耳丸く描くだろい?」
「えー、そうなの?」
「あとこの辺のラインも猫っぽく見えるんだよなぁ」
「いいじゃん、別に」
「あとここも・・・」
「もー!そんなに言うならブン太くんが描いてよ、クマ!」
ゆめこはそう言って、先程使っていた木の枝を丸井に差し出した。
彼女は絵が下手だという自覚は無かったので、こんなにも自分の絵をイジられるとは少々心外だったのだ。
丸井は木の枝を受け取ると「見てろよい」と得意げに絵を描き始めた。
しかし出来上がったのはゆめこのよりも稚拙だった。
もはや動物にすら見えない、まるで妖怪だな。とゆめこは思った。
「ブン太くんてもしかして絵心ない?」
「・・・ゆめこにだけは言われたくねぇ」
真顔でそんなことを聞いてくるゆめこに、丸井は持っていた木の枝をぽいっと放り投げた。
手ぶらになった丸井はんー!と大きく両手を上に上げ体を伸ばすと、
「そろそろ戻るか」
とゆめこに声を掛け、立ち上がった。
先程の話をぶり返すことなく、いつも通りの態度で接してくれる丸井が、ゆめこはありがたかった。
「好きな人って誰?」そんな風に問い質されると思っていたし、自分もそれに応える責任がある。そう思っていただけに、少しホッとしてしまった。
実際丸井は聞くまでもなくゆめこの好きな人とやらには目星が付いていただけなのだが、彼女はその事実を知らない。
「そうだね」
と返事をすると、ゆめこは丸井の後に続いた。
(180521/由氣)→98
心乃ちゃん・・・!