鈴の音が聞こえる 後編


「2か月後、シャボンティ諸島から新世界に向かう」

初めて書いたユイへの手紙。
手紙と呼ぶには短すぎるそれを
テンに託す。

さすがのこいつも
新世界まではこられないだろう。

新世界に足を踏み入れたそのあとは
もうユイとの連絡手段もなくなる。

1年8か月前のあの日
新世界を目前にして
俺たちは世界中にバラバラに散らばった。

散らばる直前、船にコーティングが必要だと聞くまで
俺はテンが海を渡れなくなることについて、考えていなかった。

飛ばされた先で修行を積みながら
考えたことは二つ。

誰よりもつよくなる

そして
今度こそ、本当にユイをつれていく。

新世界に行くと伝えても
それでもユイがこなかったら

そのときはもう、別の道を歩むしかない。

いつ帰ってこれるかわからない。
会えず、連絡も取れず
ただ俺を待つだけの時間にはしてほしくなかった。

だから、綴った1行。
最初で最後の、俺からの手紙。

「頼んだ。」

テンは一声鳴くと
大空へと飛び立った。




*******




2年ぶりのルフィとの再会。
だが、再会を噛みしめる間もなく、次から次へと海軍が攻撃をしかける。

だが俺たちも、もう昔とは違う。
そんな簡単にやられることもねェ。

とりあえず、パシフィスタを倒したのは、グル眉じゃなくて俺だ。

「ルフィ急げ。みんな船で待ってる。」
「おう!」

グル眉、ルフィとともに、船に向かって走る。


結局、俺の手紙にユイからの返事はこなかった。
2か月前からピタッと止まったユイからの手紙。
それが、ユイの答えのような気がした。

「おいどうした」

急ブレーキをかける音に振り替えると、立ち止まったルフィが
丘の上を見つめている。

その視線の先を追うと
そこには冥王レイリーの姿があった。

「レイリー!!!」

ルフィとレイリーの別れを見守る。

せめて俺も
新世界に行く前に、ユイともう一度会って話がしたかった。
でも一方で、もう会えないなら、このまま会わないままでよかった気もする。

・・・女々しいもんだな。俺も。

「何をしてる!早く麦わらを討ち取れ!」
「おっと、」
「いそげルフィ」

新世界へ出発するため
レイリーに背中を向けて、走り出そうとした

そのときだった。


リン−−−


鈴の音が

聴こえた気がした。

「おい、ゾロ!どうした」
「止まるんじゃねェ!クソマリモ!!」

動かない俺に、二人も足を止める。

聴こえるはずのない、鈴の音。

呼ばれたような気がして
再び後ろのレイリーの方へと、目を向けた。

レイリーの向こう側から、鳥の羽音がする。
小さく、青い塊が飛んでいるのがわかった。

「・・・ルフィ、頼みがある」
「なんだ?」

遠くに見えていた小さな青い塊は
だんだんとこちらに近づき、形を成していく。

「・・・仲間にしたい、やつがいる。」

青い塊、テンの後ろから、走りくる姿が見えた。

「クソマリモ、おまえ急に何言って「ゾローーーーーっ!!!!」

グル眉の声が
俺を呼ぶ声にかき消される。

声の主はレイリーの隣に並ぶと
その足を止めた。

「ゾローーーっ!!
 船長さーーんっ!!
 私も!私も一緒に!
 連れてってーーーー!!!!!」

口元に手を添えて
めいいっぱいの声でユイが叫ぶ。

「ゾロ、あいつか?」
「あぁ、そうだ。」
「わかった。」

ルフィはうなづくと
ユイと同じように口元に手を添えた。

「いいぞーーーーっ!
 一緒に来ーーーいっ!!」

躊躇いなく答えたルフィの言葉。

ユイは大きく頷くと
あの頃と変わらない笑顔をこちらに向けた。


「さんきゅ、キャプテン。」

ユイ

俺、やっぱ好きだわ、おまえのこと。

だから、連れていく。
もう置いて行ったりしない。

「ユイ!!!!飛べ!!!!!!」

助走をつけるために
ユイが数歩分後ろに下がる。

「ちゃんと受け止めてよーーっ!!」
「任せろ!!!」

ユイが

地面を蹴った。

テンと一緒に
ユイが降ってくる。

「ゾロっ!!」

ずしりと
腕にかかるユイの重み。

受け止めた腕の中の重みを
俺はきつく抱きしめた。



抱きしめた腕の中で


の音がこえる


もう、離さねェからな。








NEXT episode2



***あとがき***

書きたかったシーン書けましたーーー涙

飛べ!!
のとこです。笑

キャッチしたあたりは
神風●●ジャ●ヌの最終話イメージ・・・笑
世代の方、いらっしゃいますかね?

長編にしようか迷っていたものを
2話にぎゅぎゅっと凝縮してしまったので
ちゃんと伝わる内容になっているかが不安。

夢のくせにヒロインちゃんとの絡み少なすぎなので
そのうち過去編、とか
続きの短編とか書けたらいいな。

最後までお読みいただきありがとうございました。


2019.04.24

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