「——私としてはあなたと共に過ごす時間が増えることは喜ばしいが、あなたは仕事で忙しいのではないか」
とある晴れた日の午後。久しぶりに都合がついたからとデートの誘いに来たアリスにラインハルトは少し思案して、そのように口を開いた。
ラインハルトとアリスは恋人同士である。二人が付き合っていることはリグバースの住人であれば誰もが知っていることだ。告白自体はアリスからだったが、アリスが告白するよりも前からラインハルトがアリスを意識する機会は何度もあったから付き合うのも時間の問題だったのだろう。
とはいえアリスにはSeedの仕事があるし、ラインハルトも王女であるベアトリスを守るという使命がある。恋人同士という割にはデートのような恋人らしいことはあまりしてこなかった。
——アリスは仕事が好きだと知っていたし、そんな彼女に自分の為に時間を使わせてしまうことに対して何となく申し訳ない気持ちがあった。だからラインハルトは自分から彼女を誘うことは殆どなかったのだが。
「私も久しぶりにラインハルトさんと一緒に過ごしたくて。……だめ、ですか?」
控えめにそう言われて断れる筈もない。尤も、ラインハルトは最初から断るつもりなどなかったのだけれど。
主であるベアトリスからは「アリスさんのことを大事にしてあげてください」と念を押されているし、ベアトリスに何も言われなかったとしても極力アリスの願いを優先したいと思っている。
何より、自分がもっとアリスと一緒にいたい。一人の女性に対してそんな風に思ったのはラインハルトの人生において初めてのことだった。
「いや、誘ってもらえて嬉しい」
平静を装ってはいるが、ラインハルトはアリスに存外弱い。
本来なら自分からデートに誘うべきなのでは、と思うこともあるけれど恋人から誘われることは純粋に嬉しいと思う。
じゃあ今回はこの場所に行きたいです、なんてニコニコと語るアリスに了解したと返事をする。嬉しそうに笑う恋人の姿はとても愛らしい。
この幸せな時間がずっと続けば良いのにと、そんな風に思ってしまう。
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