「ボクが姉さん以外の人間と親しくなるなんて珍しいことですよ」
きょとんとした表情のミノリさんにボクは思わず笑みをこぼした。
毎日のように店に顔を出す彼女は今日も並べられたアンティークを見ている。どれもボクと姉さんが選んだ自慢の商品だ。
生憎、彼女がアンティークを買ってくれたことはないけれど。
「この店に通っているうちにアンティークの魅力に気付いたし、ミステルとも仲良くなれたなら嬉しい」
「その割にはアンティークを買ってくれたことありませんよね」
「だってあんまりお金ないし……でもいつか買いたいと思っているんだよ」
最近かぶの種をうっかり必要以上に買い込んでしまったのだと彼女は続ける。
しっかりしているようで妙なところで抜けている変わった人だ。ボクが珍しく心を許してしまうほど不思議な魅力に溢れている。
出会った頃はまさか彼女とこんなに親しくなるとは思わなかったのだが。
天然で優しくて見ていて飽きない。ここ最近は彼女が店に来てくれるのを楽しみにしている自分がいる。
「そういえばいい材料が手に入ったからペンネアラビアータ作ろうと思うんだけど、良かったら食べに来ない?」
「素敵な誘いだとは思いますが……あなたはいつも恋人でもない男を簡単に家に呼ぶんですか?」
「さ、流石に知らない人や親しくない人を誘ったりは……あなたにはいつもお世話になってる、から」
つまり彼女にとってボクは家に呼べるくらい心を許せる相手だということ。
尤も、彼女の性格だとこの町で暮らす見知った人達なら何の抵抗もなく呼んでしまいそうだが。
……もやもやする。彼女とボクはそんな特別な関係ではないけれど、もしも他の男の人にも手料理を振る舞っていたら嫌だなとか、心の狭いことばかり考えてしまう。
「もちろん忙しかったら断ってくれて構わないんだけど……私も料理に自信があるわけじゃないから口に合うかわからないし」
「店の定休日か営業時間外でしたら、構いませんよ。あなたの料理の腕も、料理祭に出場するくらいですから心配はしていません」
ボクの返事を聞いて嬉しそうに笑う彼女にはいろんな意味でかなわない。
→