「……あなたが私の式神と戯れている姿はとても愛らしいとは思いますが」

 白い鳥——正確には鳥の姿になったイカルガの式神がカグヤの肩の上でその翼を休めている。
 これまでは仕事で使うか里の人からの依頼で渋々貸し与えていた式神を何でもない時間に使うのはどうにも不思議な感覚だ。
 肩に止まった式神を本物の鳥を扱うように優しく撫でている伴侶の姿も様になっている。都のほうで流行っている小説の一場面を切り取った光景であると言われても信じてしまいそうなほどに。
 だが、カグヤが目の前で自分にとって仕事道具である式神と幸せそうに戯れているというのはイカルガにとってあまり面白くないことだ。

「イカルガさんって意外とやきもち焼きですよね」
「はい?」

 他でもないカグヤにそう指摘されてイカルガは面食らう。
 普段は自らの感情を周囲に悟られないよう常に気を張っているし、心の内を隠すのは得意分野だとも思っている。幕府にいた頃は人間の醜い部分を随分と見てきたし、心を知られるというのはそれだけで大きな弱点になり得るのだからと自然に本心を隠して生きるようになった。
 ——それがどうにもカグヤの前では上手くいかない。思えば彼女に想いを告げられるよりも前から彼女のお人好しっぷりに困惑することは多かったような気もするし、彼女の人柄にあてられたのかつい気が緩んでいることもあった。
 尤もカグヤを人生の伴侶とした今となっては敢えて彼女の前で本心を隠す必要などないのだけれど。

「私の前でそういう風にいてくれるのはそれだけ大切に思ってくださっているのだと実感できて嬉しいです。やきもちを焼いている姿も可愛いと思いますし……」
「…………カグヤにそのように言われるのは複雑です」

 大人の男に対して可愛い、など。喜ぶ男ももしかしたらいるのかもしれないしカグヤにとっては愛情表現だと理解もしているがパートナーからの褒め言葉はもっと別のものがいい。
 とはいえ、彼女が穏やかに微笑を浮かべている姿を見ていると結局受け入れてしまうので大概カグヤに弱いとイカルガは息を吐く。

「心配しなくてもいつだってイカルガさんが一番ですよ。式神はイカルガさんにとって大事なものなので丁寧に扱っているだけです。……小さな動物の姿だと可愛いなと思うのは否定しませんけど」
「誤魔化してませんか?」
「そんなことないです」

 カグヤの肩に止まっていた式神を紙の姿に戻す。彼女が喜ぶのならと式神を小動物の姿にしてみたが、頻繁にやりたいとは思わない。
 ……最愛の人がどうしても、と言うのならまたやってしまうこともあるだろうけれど。

「イカルガさん、大好きです」
「…………私も、大好きです」

 盛大に誤魔化されているような気がしないわけでもないが、そう言われてしまうとこれ以上何も言い返せない。
 彼女のまっすぐな想いはいつも心臓の奥に熱を灯す。