これが幸福、ということなのか。
じわりと胸の奥に広がる、言葉では言い表すことの出来ないあたたかい感情を自覚しながらユヅキは思った。
ナナミと恋仲になったのはいつのことだっただろうか。告白したのはユヅキが先だったが、自分も同じ気持ちだと恥ずかしそうに笑ったナナミの顔は今でも鮮明に覚えている。
毎日彼女と顔を合わせ、何気ない会話をしている——ただそれだけでもあの頃は十分幸せだったのだ。
いつからだろう。ナナミと家族になりたいと、そう願うようになったのは。我ながらワガママだと思うものの、彼女と築く家庭はきっとあたたかくて楽しいのだろう、と。それはいつか実現させたい夢となった。

「ナナミと一緒になりたいってのは十分伝わったんだけど、具体的にプロポーズのタイミングとか考えてるのか?」
「……まあ、何となくは。あとはボクと、それから彼女の気持ち次第でしょうね」
「お前たち付き合い始めてそれなりに経ってるし、オレはお互いに好き合ってるなら大丈夫だと思うけどな」

茶屋で大福を頬張りながら、ヒナタは言う。
ユヅキともナナミとも仲が良く、二人のことをよく知っているヒナタとしては早く祝言を挙げてくれという気持ちもある。

「彼女のことは大切にしたいんですよ。自分の気持ちを一方的に押し付けて、傷つけたくはないんです」
「……ユヅキらしいというか、まあ最後は当人たちが決めることだし二人にとって一番のタイミングで祝言を挙げることになればいいけど」
「こんなこと、ヒナタさんにしか話せませんけどね」

身内であるウメキチやオミヨに話すのは流石に気恥ずかしいし、コマリやカスミに話すのも少し躊躇われる。
当然ナナミ本人に言える話でもなく、里で一番仲の良い同世代の友人であるヒナタにこうして話したのだ。
彼女と一緒になりたいけれど、彼女がそれを望んでいなかったとしたら、自分の気持ちを一方的に押し付けたことになってしまう。もちろん彼女に愛されていないとは思わない。でも、と考えてしまうのもきっとそれだけナナミのことが大事なのだ。
こんな話に付き合ってくれるヒナタには感謝してもしきれない。

「にしても、ナナミのこと話してるときのお前って本当に幸せそうな顔するよな」
「そう、でしょうか」
「甘味巡りしてるときとはまた別の顔だな。知り合って数年経つオレもお前のあんな表情初めて見たよ」
「自分では自覚がなかったのですが……そこまでわかりやすい表情をしていたのでしょうか?」

確かに彼女のことを考えているときの自分は顔が緩んでいてもおかしくはないけれど、まさか周りから見ても分かるほどだったなんて。
実際に指摘されると少し——否、かなり恥ずかしい。

「ま、苦痛そうな顔されるより幸せそうな顔してくれてたほうがオレも嬉しいけどな」

湯のみのお茶を飲み干したヒナタはお幸せに、と笑う。
彼と話して少しだけ不安が和らいだような気がした。

いつか、彼女と家族になれたなら、恐らくそれは自分の人生の中で最も幸せな瞬間だろう。