「やっぱり変じゃないかなあ?」
ワンタタンは普段着ている犬の着ぐるみの頭を脱いで、鏡に映る自分の姿をちらりと見る。
水色の髪の青年。首から下はいつものように着ぐるみのままだが、中身はきちんと人間の身体だ。着ぐるみの腕で自分の頬に触れる。温かい、血の通った肌。ほんの少し前まで自分が失っていたものだ。
——自分の顔だというのに、鏡に映る青年の顔は未だに見慣れないもので、どこか他人のように見えてしまう。
子供の頃に自分の身体を失い、ずっと着ぐるみの姿で生きていたのだから大人に成長した自分の顔など実際に最近初めて見たわけで見慣れないのも当然ではあるけれど。
「変じゃないよ、大丈夫」
何度も鏡で自分の顔を確認しているワンタタンの姿は微笑ましい。
結婚して以来、ワンタタンはナナミの前では素顔を晒して生活していることもあるが着ぐるみ姿に慣れすぎてどうにも素顔で生活することが落ち着かないらしい。
ぺちぺちと自分の顔を叩いてみたり、何度も鏡を確認したり。着ぐるみ姿のワンタタンに惚れたナナミとしては普段の姿も十分魅力的に感じるのだが、素顔もまた違った魅力がある。
「きみは優しいから、いつもそう言ってくれるよね」
「ワンタタンがどんな姿でも、同じくらい好きなだけだよ」
犬の着ぐるみでも、青い髪の好青年でも、ナナミにとってはどちらもワンタタンで、ナナミが惚れた相手である。
ナナミの言葉にほんのりと頬を朱に染めたワンタタンは慌てて着ぐるみの頭をかぶってしまった。見慣れた犬の着ぐるみ姿だ。
「ねぇ、ワンタタン。私はワンタタンと結婚できてとても幸せ。ワンタタンはどう?」
「きみはいつだって、ぼくに幸せをくれる。……きみに出会えて良かったって心の底から思ってるんだ」
きみはぼくを救ってくれた、と。ワンタタンは口癖のように繰り返すことがある。
惚れた相手が苦しんでいる姿を放っておけなくて、突き放されても手を伸ばそうとしただけだ。諦めが悪かっただけで、決して特別なことはしていない。
それに彼は出会った頃から十分幸せをくれているのだから、お互い様だ。
「これは、きみがぼくに教えてくれた幸福なんだよ」
幸せすぎて泣きそうだ、なんて。我ながらどうかしていると思うけれど。
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