果てなき先へ

*ユークレースED・B後


 女王である少女はその男の訃報を静かに聞いていた。表情に変化はない——ように見える。泣き崩れるのではないかと心配していた執政官と侍女は思っていたよりも落ち着いている少女の姿に驚いた。

「……そう。ユークレースは逝ってしまったのね」

 長くはないと、分かっていたけれど。そうぽつりと漏らす少女……フィーリアの声はどこまでも静かなものだった。
 ユークレース。フィーリアが契約した、遍歴の騎士。出会ったときには既に不治の病を患っておりそう長くない命であった。胸の病気だったらしく、時折苦しそうに顔を歪めていたのをよく覚えている。
 このターブルロンドには彼の病を癒やす薬はなく。また彼の病を治せるだけの技術もなかった。協会の力を借りれば生きながらえることは出来たかもしれないけれど彼はそこまでして生きることを望まなかった。
 剣を置き、穏やかに生きる道もあっただろう。病を治せずとも身体を酷使することさえなければきっともう少し長く生きることが出来たのだと思う。ユークレースに生きてほしい、と剣を取り上げることが出来なかったのは他でもない自分だとフィーリアは自嘲する。
 後悔はない。ユークレースは本懐を遂げたのだ。彼の騎士としての生き様を誇りだとすら思う。

「シジェルの野では彼は穏やかに過ごしているのかしら。それともやっぱり戦いに明け暮れる日々?」

 もう暫く私はそちらには行けそうにないわ、と呟いてフィーリアは紅茶の注がれたカップを口へと運ぶ。
 せめて最期の瞬間くらい、長く彼を苦しめていた発作もなく穏やかに逝けていたらよいのだけど。
 ——ユークレースが生きたかったのか、それとも死にたかったのか。今となってはフィーリアにはわからない。生への執着を覗かせていることも確かにあったし、死に場所を探すように戦っているように見えることもあった。
 彼にとってこれが最良の結末であったのか。自分は彼にとって善き主であったのか。いつか遠い未来、シジェルの野で再会を果たしたとき彼は自分の生き様を善いものだと思ってくれているだろうか。

「……ユークレースという騎士がいたこと、私は覚えているわ。この国の歴史に残らなかったとしても、ずっと」

 短い命が燃え尽きるまで、走り続けた女王の親愛なる騎士よ。