ねぇ、

「ルキナが選んだ道なら、僕はそれを喜んで受け入れる。それに、僕だって愛するルキナやマークを傷つけたくないんだ」

 自分の喉元に突きつけられたファルシオンを、僕は冷静に見据えた。
 僕はきっとファウダーに逆らえない。それは僕自身が一番分かっている。だからこそ、ルキナの行動は正しくないのかもしれないけれど間違ってもいない。彼女の手でこの命を終わらせてもらえるのなら僕にとっては本望。
 僕は妻であるルキナを、娘のマークを、僕の相棒とも呼べる――ルキナの大好きなお父さんでもあるクロムを、殺したくはない。
 だけど僕がファウダーに逆らえないのなら、僕の意志とは無関係に彼らを殺してしまうのだろう。

「夫らしいことなんて何も出来なかったけれど、僕を愛してくれて有難う。君に出会えて、本当に良かった」
「……っ!」
「せめて、この時代にマークが産まれるまでは生きていたかったけど大切な人達を苦しめない為に。僕はルキナの選択を誇りに思う」

 ルキナを妻に選んで良かったと。僕は心の底からそう思えた。
 やり残したことなんて山ほどある。本当は死にたいと思っていない。寧ろ彼女とこの世界を生きていたい。
 だけどそれは全て僕のわがままで。世界の為にも僕はここで死ぬべきなのだ。

「ど、うして……私は愛するあなたを殺そうとしているのに、それでもあなたは笑っているんですか」
「……ねぇ、ルキナ。僕は幸せだ。愛する人の手であの世へ逝けて、クロムや君を殺すという最悪の結末を免れることが出来るのだから」

 君を幸せにしてあげられなくて、ごめん。
 やっぱり私には出来ないと泣き崩れたルキナを、僕は抱きしめてあげることも出来なかった。