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圭は記憶を取り戻した後、すぐに私に電話をしてきたらしかった。結局私はじっと彼の話を聞くことができず、朝ご飯と弁当を作ることで彼の声や懐かしい記憶から目をそらすことにした。そうするしかなかった。

葉流火のずぼらは治ってないみたいだな。返信がこないんだよ、莉子は相変わらず反応が早くて助かった。
まるで中学時代のように、圭は簡単に私を喜ばせた。寝起きだからかまだ少しかすれた声が耳元で笑うたびにくすぐったかった。

未練がましい、と自分に呆れる。それでも簡単にはあきらめられない恋だった。忘れられて、あんなに泣いたのに。記憶を取り戻したって、彼が私に振り向くことはないのに。

「…なるほど、俺は記憶を失っていて、野球のことも忘れていた。だから都立の制服がかかってたのか…」

「…言っとくけど、葉流火も同じ学校だからね」

「…それはまあ、ちょっと察してたけど。あいつもたいがい俺が好きだよな」

「今更でしょ」

「まあな。…葉流火には悪いことしたかな…
で、お前は?」

「え?」

「学校。見た感じ、最近全然連絡とってないだろ」

「まあ、ね。同じだよ、ふつうに」

「そっか。助かるよ、莉子がいるんならまだ甲子園もやりようがあるよな」

「あ、のねえ、私高校では、」

「ん?おい莉子、なんで千早と藤堂のアドレスが入ってるんだ?」

「………その二人も都立の野球部員だからですけど」

「はあ?…ああ、まあ、そうか。いや、ラッキーだったな。これなら本当に…」

変わってない。変わってない変わってない!
むかつくところも、人の話なんてまるで聞きやしないとこも、都合が悪くなったら会話を転換させるとこも!

ああ、ほんとにむかつく。結局こいつの前じゃ、私は何も逆らえないことも。
こいつに…圭に笑いかけてもらうためなら、きっと私はまた青春を捨ててしまうだろうことも!

全部むかつく。
それでも、

「莉子、今日は早めに行ってグラウンドの様子見よう。必要だったら整備もしないと…」

「…ばーか」

「ん?なんか言ったか?」

「別に、好きにすればっていったの!」

「おう…莉子も来るんだけど」

「はいはい、仰せのままに!!」

莉子たん!?どうしたの!?とパパの叫ぶ声が聞こえたけど無視して、結局上機嫌になっている単純な私に自分自身でも呆れながら。

また忘れられるくらいなら、今度はちょっとくらい、私から歩み寄ってやってもいいかな。

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