途中放棄
思いっきり顔をしかめてしまった。酷い面になっていることは分かっているがそんなことに構ってはいられない。構っていられないし、向こうは何にも気にしちゃいないのだ、私のことはそんなには。
「やあやあ名前ちゃん! 君まだこんな所にいたんだね!」
先生に頼まれた買い出しも完遂し、早く学校に戻って課題を早めにやっつけようと歩きだした所だった。聞き覚えのある声に呼び止められたと思ったら案の定。絶句し突っ立っているとぺらぺらとまあ喋る喋る。声でかいわ。その彼よりも後ろに立っているのは、確かジュンくんと言ったか。彼が先ほど連呼していたので覚えてしまった。うんざりした顔を隠しもせず側に控えている。まあ分かるよ、君もなかなか大変だね。
「巴、…とジュンくん」
「ああ、やっと君の声が聞けたね! でもおかしいね、下の名前で呼ぶといいとあれ程言ったのにね! 名前ちゃんは物覚えが悪いね!」
横暴な貴族様のご要望に対する市民のわずかな抵抗は物覚えが悪いと処理されました。畜生。
「…巴の方が呼びやすいしかっこいいから…」
「ふぅん。名前ちゃんでも何か考えて行動していることがあるんだね! でも僕は日和と呼んでほしいね。ジュンくんだけずるいね!」
いやジュンくんに関してはあんたが呼ぶからうつっただけなんだけど。こだわるなあ。なんだか分からんが。巴はお家大好きじゃなかったっけか。
「日和くん、分かったからさあ、もうちょっと声落としてよ、ここ街中だからさ」
彼らは目を引く。アイドルの卵、それも実力派だ。顔もそこそこ知られているだろう。その上この声量。口調。神は厄介なものを生み出されたものだ。
「んー、まあ今回は言うことを聞いてあげよう! 名前ちゃんに久しぶりに会えたことだしね!」
「そりゃどうも…」
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斜掛