第一志望の中学に落ちた。でもそこは私にとっては希望した学校なんかじゃなくて、逆に入学なんてしたくない場所だった。だから入試では手を抜いて答案を提出した。どうせ点の開示はされないのだから、このことは私しか知る由はない。私しか。周助は私と共に進学したかったらしく共学を選んだそうで、両親もそれを望んだ。対策の方針は同じなのにレベルの違うテキストを、並んだ勉強机の隣で解く毎日。決して青学が嫌な訳ではなかった。私の通いたくない学校。周助のいる学校。
裕太が転校して寮に入ると聞いた時、裏切られたような気持ちになった。私も寮のある学校にしたかったのに。そう言ったのに。私の希望はお父さんにもお母さんにもお姉ちゃんにも止められた。もちろん周助にも。女の子だから。嫌になる。周助みたいになりたい、そんな思いは今や憧れを通り越し、濁りきったどうしようもない感情に変質してしまった。私には周助のように、物事を軽やかにこなすことができる人間ではないのだ。私はもう、彼と真っ直ぐ対峙することができない。
名前が僕を明確に避けるようになったのは、裕太が家を出てからだと思う。その前からどこかよそよそしい所は感じられたけど、きっと受験前で心が揺れているんだ、はたまた、新学期で学校に緊張しているんだと思っていた。いや、本当は分かっていた。そう思いたかっただけだった。だって僕の大切な半身だ、なにを考えているかはなんとなく分かるものだ。そして僕がなにを思っているのかも、おそらく名前は知っている。
僕は名前を兄妹として、もう一人の自分として、大切な女の子として好いている。
「そういえばめっきり試合見にこなくなったよね、えーと、妹ちゃん」
地区予選、越前のギャラリーを見た英二にそう話題を振られ苦笑する。ちょうど名前に思いを馳せていたところだった。名前が応援に来てくれたのは数えるほどだったが、それでも嬉しかった。良いところを見せたいと柄にもなく思った。テニスにあまり関心のない名前。ルールもほぼ知らない名前。
「不二先輩って妹いたんすか?」
桃が後ろから会話に入る。自分と同学年かと思ったのかもしれない。
「んー、双子のね! でも似てるっていうか、似てないっていうか…」
「どっちすか」
「顔はあんまり似てないよね! でもかわいいよん」
一言多い。僕の妹はかわいい。当たり前だ。でもそのことを知っているのは僕だけでいいのにと思う。そんな心中はおくびにも出さず、僕は微笑むにとどまった。
「雰囲気はいくらか似ているな」
珍しく手塚が雑談に混ざってきた。そういえば手塚とはきちんとした面識があったんだった。僕らの輪に入って名前もにこやかに会話していた。春の日。僕らがまだ一年生の頃。
「そうかな」
名前はきっと嬉しくないだろう。僕たちの本質は違うのだ、悲しいほどに。
誰にも気付かれないような、小さなため息をそっと吐き出す。さっきまで晴れていた空に垂れ込めた暗雲からは、今にも雨が降り出しそうだった。早く名前に会いたい。
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斜掛