「裕太の彼女どんな子だろうね」
「え?」
「ん?」
見開いている。いっつも見えてんのか? と母の胎から共に過ごしてきた私ですら疑問に思う周助の目がかっぴらいている。ずい、と真剣な顔で乗り出してきた周助に少し引きながら私はソファの背もたれに後ずさった。
「あれ知らなかったの」
「知らなかったよ……なんで知ってるの」
「いや〜私の方が裕太と仲良いからなあ」
「二人して僕を仲間はずれにするのかい」
「ごめんて」
仲の良さは別に、どっちもどっちだとは思うけど、連絡の頻度は私の方が高いと思う。私からするから。裕太も、彼女ができてからはなにかと聞いてくるようになった。お姉ちゃんよりは彼女に歳が近いから感性は合うのかもしれないけど、私は恋愛に長けてるわけじゃないし、むしろ逆なのだが、初心な裕太の話は聞いていて微笑ましい。それに、頼られるのは素直に嬉しいものだ。
「裕太に先越されるとはなあ」
「わ、私だって好きな人くらいはいるし」
「……へえ? 誰?」
見栄を張ったら、それを見透かしたように周助がそう聞いてきた。
「あ、跡部くんとか?」
「なんで疑問形なの」
「なんでもだよ!」
「ふうん……。なんで好きなの?」
「え、なんでって、なんだかよくわかんないけどかっこいいし、派手だし、テニスも強いし」
「手塚もテニス強いよ」
「いや知ってるけど……手塚くんは周助も好きじゃん」
「そうだけど、なんで僕?」
「周助怒りそう」
「なんで……」
「なんでもない」
「手塚と名前が結婚したら手塚と僕は義兄弟だね」
「けっ……!? 引くんだけど……飛躍しすぎ」
「あはは」
笑い事じゃないし割と本気で思ってそうで嫌だな。手塚くんのことは好きだけど。もう随分と会っていないから、背も伸びただろうな。
「裕太に彼女かあ……」
「周助の方がモテるのにねえ」
去年のバレンタインのことを思い出す。青学も生徒数が多いし高校も隣にあるとはいえ、明らかに中学生がもらう量じゃ無いと思う。「食べる?」となんのためらいもなく私に一箱渡してきた周助の普段と変わらない笑顔。ちなみに一箱っていうのは段ボール一箱です。さすがに周助一人では食べきれないから私もご相伴に預かったけど。私が、周助が貰いすぎるのを見越して用意していなかったのを嘆いた周助と、なぜか一緒に非難するお姉ちゃんと共に、後日お菓子づくりをすることになった。まだチョコ残ってたんだけど。お姉ちゃんの指導の元作ったパイはもちろん美味しかった。山のようなチョコは半分も消費されず、手作りのものは後日あっけなく捨てられてしまった。思いはそれなりにちゃんと、受け取っているようだったけれど。ゴミ箱に収められた色とりどりの包装紙。
「……僕は好きな子いるから」
「ええ? そうなの? 告白とかしないの」
「……一度振られてる」
「意外」
「覚えてすらもらってない」
「なんでそんな子好きなの……」
周助の趣味は理解できない部分がある。私と同じ食生活なはずなのにちょっと、いやかなり舌がおかしいし、サボテンはまだしもエアープランツ育ててる中学生男子は特殊だと思います。
「理由なんかないよ」
周助は穏やかに私に微笑む。
「大事なんだ」
そう言って周助は思い出したようにリモコンを取ってテレビをつけた。不倫のスキャンダルに司会者が文句を並べている。あの人たちも、深い理由はないんだろうか。私も、まっすぐに想える大事な人は出来るんだろうか。
翌年はもらったチョコ溶かして固めてケーキ作って食べるアレ
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斜掛