(現パロ 高校生 ※不謹慎)

三ちゃんの走りが大好きだった。乱太郎だって同じ陸上部で活躍していたけれど、三ちゃんのはまた違う光りを持っていた。でも私を最も魅了したのは、彼の細くてしなやかに伸びるふくらはぎだった。

スポーツショップに行こうと言い出したのは三ちゃんだった。靴を選んだのは私だった。ラインがすっと入った、練習用の赤いシューズ。店の蛍光灯に照らされてエナメルがつやつや反射していた。じっと見つめていたら、「これにしようかな」なんて後ろから笑いながら言われて恥ずかしかった。けれどそれを選んでくれたのが嬉しくて、しばらくにやにやしてしまい、またからかわれた。

練習でも、その靴は太陽に照らされて光っていた。走る三ちゃんの汗も、ゴールした後の笑顔も、きらきら光っていた。むき出しのきれいに筋肉のついた脚が、軽やかな声が、私をどうも眩しくさせる。目を細めても陽射しはきっちり私たちを照らした。

それからだった。三ちゃんの足が駆けていってしまったのは。

履いた最初の日、今までよりかなりいい記録が出たのに、練習する度にタイムがどんどん縮んで、みんな驚いていた。でも同時に応援してくれた。三ちゃんもとても嬉しそうだった。私だってもちろん嬉しかった。名前の選んだシューズのお陰かも、そんな事言われたら差し入れだって気合いが入ってしまう。自分なりに栄養バランスを考えたお弁当を持って、その日の大会も応援に出かけた。

でも三ちゃんは来なかった。
三ちゃんが行ったのは競技場のグラウンドではなく、救急病院だった。

交通事故。

私の大好きな彼の脚は、ぐちゃぐちゃになってしまって、もうどうしようもなくて、膝下は全部切断してしまわなければいけなかったんだそうだ。

「うそだ」
「嘘じゃないよ」

病室のベッドの上、三ちゃんは以前と変わらずにきれいに微笑んでいた。

「泣かないで」

これが泣かないでどうすれば良いの。音もなく溢れては落ちる涙の膜の向こうで、三ちゃんの懸命な笑みがぶれてぼやけてゆらゆらしていた。

ああ、私が邪なことを思ったからかな。ショップで赤いのを見ていたのは、あの童話を思い出したからだ。三ちゃんの踊る足が見たかった。走り続ける脚を独り占めしたかった。
もう、三ちゃんのあのきれいな脚は走らない。本来膨れているはずの場所のシーツを力なく見やる。

どうしたの、それ。どこにいっちゃったの。

私の、私の三ちゃんの脚なのに。


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