(現パロ ※尾浜さんと同い年のご兄妹)
目の前が真っ暗なのは、私が彼の腕に抱き込まれているからだった。
帰りのHRの後先生に用事があって、それを済ませ教室に帰ってきたときには、みんな既に各自の時間を過ごしにいなくなっていた。彼以外は。
なんとなく居心地の悪さを感じる。さっさと支度をして帰ろうと、自分の席に向かった。せっかく窓際の列なのに丁度柱と隣り合わせの、ちょっと損な私の席。座ってカバンに手を伸ばしたところで、彼が覆いかぶさってきた。
「尾浜くん」
「尾浜くん」
「くるしいよ」
呼びかけても、きつくしめられるだけだった。沈黙に彼の心音がよく響いていた。どうしようかと考えあぐねていると、彼はようやく口を開いた。
「…苗字で呼ばないで」
普段の彼のものとは程遠い、ちいさな声でそう言われた。
「…勘ちゃん」
「…うん」
ずるずると彼の腕の力が抜けて、今度は肩に顔をうずめられた。
体重をさらにかけられて、もはや彼は私の膝に座り込んでいるような状態だ。
「重いよ」
「うん」
「あとここ学校だよ」
「うん」
「誰か来たらどうするの」
「うん」
生返事。仕方なく背中に腕をまわして、丸まった背骨に触る。もともと細身ではあるけれど、少し痩せたように感じるのは気のせいだろうか。
「名前」
「なに?」
頭を押し付けられて、少しくすぐったい。
「なんで俺も名前も何も変わらないのに、こんな事しなくちゃいけないんだろうね」
変わらない、そう言うけれど、そんなことはない。私も、勘右衛門も。
「仕方ないよ、私たち兄妹だけどもう他人なんだもの」
母さん達が別れてから二年、同じ学校になってしまってから一年、クラスメイトになってしまってからひと月。くすぶってねじ曲がったこの思いをどこへやれば良いのか、私たちはまだ答えを出せないままだ。
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斜掛