(現パロ 高2)


冬休みに入ったというのに、クリスマスイブだというのに、登校しなくてはいけないのはなぜか。
委員会だからです。うちの学校はどうしてか、委員会活動にもわりかし力を入れている。そしてわが生徒会はみんなだいすき(私は例外だ)立花仙蔵くんがトップにおわすので、なかなか手を抜いたりというのもできない。その上、私は奴と幼馴染故に、なにかと足蹴にされる。中高一貫で下の子たちとつながりがあるのがせめてもの救いであり楽しみだけれど、入りたくなかったというのが本音だ。気づいたら仙蔵に勝手に立候補させられていたので、拒否権はなかったが。

来たついでに忘れ物がないか教室を覗くと、見馴れた姿があった。

「潮江くん」
「…名字?」

終業式のときよりも隈をふやし、げっそりした潮江くんは、聞けば私と同じく、委員会で学校に来ているそうだ。…徹夜とかするならもうちょっと、前々から準備しとけばいいのにとか思わないでもないが、私のところも休みに駆り出されているので人のことは言えない。

「イブにおひとりでお仕事ですか潮江くん」
「ああまあ、俺の責任だからな…というかうちは仏教徒だ」

真面目に返されてしまった。ちょっと、私がはずかしいじゃないですか。

「てかお前もだろ名字」
「残念私はひとりじゃないで…いやひとりの方が良かったわ」

「名字」

背後で聞き慣れた声がした。

「げっ立花」
「なんだその汚い反応は」

仙蔵はPコートにマフラーをかっちり巻いて、呆れ顔で立っていた。

「何をこんな所で油を売っているんだ。さっさとしろ」
「いや私さっき来たばっかだし」
「早く」

威圧感半端ないその声に押されて、私はあわてて自分の机を確認した。よし、忘れ物はない。杞憂だったみたいだ。自分だって上着で、今来たばっかのくせに仙蔵は…。

「あ、そうだ潮江くん」

たしか鞄にあったはず。ごそごそ中身をとりだした。

「めりくりー、糖分取らないと頭働かないよ」

チロルチョコをふたつ、潮江くんの机に置いた。

「…ありがとう」
「どういたしまして」

じゃあね、と手を振ると、ぼーっとしている潮江くんは目をしぱしぱさせて答えた。うん、はやくチョコ食べたほうがいいよ。死相でてるよ。仙蔵の機嫌がなんだかとても悪そうなので、急いでその背中を追った。



「なんで私ら以外いないの…」
「当たり前だ、休みにわざわざ呼び出すのは忍びないだろう」

私が勘定に入らないのはまあ、今更だけど。そう広くはない生徒会室は、人が居ないと印象が違う。

机を挟んで向かい合って座り、ぼちぼちしゃべりながら作業を進めた。何をやらされるのか内心びくびくしていたが、二人で終わりそうな内容だったので安心した。仙蔵はすぐ機嫌を損ねるし怒ると雰囲気がやばすぎてめちゃくちゃ恐いけれど、ビビらずなにか話していればすぐおさまるので、楽なほうだ。クールとか言われてるの、とても理解に苦しむけれど。ちなみに藤内のときは大変だった。

「そういえば仙蔵いいの今日、彼女」
「いいも何も、とうに別れたが」
「はあ!?」

しれっと言いのけ、普通に手を動かしている。

「ええ…なんで」
「断るのが面倒な奴だったから、今まで適当に相手をしていただけだ」

別れを切り出すのも面倒だと思うんですがそこは。

「仙蔵も独り身ですか」
「生憎私は名前と違ってモテるがな」

言い返せない。仙蔵にはファンクラブだなんて馬鹿げたものもあるくらいだ。

「クリスマスといえばさ、うちの弟vitaが欲しいとか言うんだよ、DSも持ってないのにだよ、最近の小学生どうなってるんだろうね」
「お前よか能はあるだろう」

私だって小学生よりは色々成長してるわ!さすがに!その言葉はぐっと押し込めて、会話を続けた。

「仙蔵は欲しいものないの?」

そう聞くと、仙蔵は少し動きを止めた。うすく口をひらいた、けれどすぐ閉じた。


「お前は本当に阿呆だな」


手元に視線を落としたまま、無表情にぽつりとつぶやかれた。つややかな黒髪、ついとひかれた眉、伏せ目を縁取る睫毛。つぐまれた形の良い唇。
いつもの罵声とはちがった。だってその言葉たちは意地悪な笑みとともに私に降るものだったから。

「どうしたの仙蔵」
「どうもしていない」

私と目をあわせないで、またもくもくと作業をする。

「仙蔵ヒマならさあ、あとで駅前のイルミネーションにいるカップル冷やかしにいこうよ」

阿呆、とまた言われた。今度は口許がすこし緩んでいた。肯定と受け取っておこう。

「あとお店もみたい」
「どうせそっちがメインなんだろう」

ばれたか。あわよくば仙蔵に奢ってもらおうとか思ってるのも、きっと見透かされている。

「で、お前は何が欲しいんだ」
「あれ、ケーキ、食べよう」

最近できたケーキ屋は、店内のスペースでそのまま食べれるとかでも人気なところだ。値段もそこまではらない。

「何がいいかな、ショートケーキは外せないよなあ、タルトもいいよね…仙蔵は?」
「…どうせ名前の食いたいやつを分けることになるんだろう?」

よくご存知で。恋人と過ごしたクリスマスなんて今まで一度もないけれど、そういえば仙蔵に会わなかったクリスマスもなかったなあ。家族へのお土産も買わなくてはと、ケーキたちに思いを馳せた。


151225
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