(※司と双子 ※捏造過多 暗い)



『名前が瀬名先輩のfanでして、会っては頂けませんか』
『少し世間知らずですが、気立ての良い娘ですので』

 司の紹介は見合いの仲介のようだった。世間知らずとは、人の事は言えるのか。断るのも司相手では中々に面倒で、その双子だという彼女に結局は会うことになってしまった。


 モデルの仕事が終わった土曜の夕方、彼女の指定したカフェに行くと彼女はすでに来ていた。
 店内に人はほとんどおらず、少し薄暗い店内にはクラシックがごく小さい音量で流れていた。

「初めまして。朱桜名前と申します。司からいつもお話を伺っております」

 そう挨拶した名前は赤い髪に紫の瞳、司と瓜二つだった。もっとも、彼女はその髪を肩より下に伸ばしていたが。
 何を話したかはよく覚えていない。興味がなかった。ただ司の親類というだけで、彼女は他のファンと何も変わらない。

「瀬名さんは本当にお綺麗ですね」

 そんな事、今更だ。こんな職業に就いているのだから。

「幼い頃もかわいらしかったのでしょうね」

 ありきたりな会話にありきたりな返しをした。けれども、彼女の続けた言葉は嫌に耳に響いてしまった。


「誘拐でもされてしまいそうなほどに」


 息が止まった。
 彼女の顔をまじまじと見る。今までお互い、微妙に逸らしていた視線がかち合う。司と同じ、いやもっと深い暗い色をたたえた目。

「…何であんたが知ってんの」

 思わずファン用の対応も忘れ放った言葉に、彼女は少し目を瞬いて見せた。

「あら、本当だったのですか」

 ただの私の冗談だったのですが。そうぬかしてまた表情を戻した。

「私と同じですね」
「…は」

 彼女は上品に、司と同じように微笑んで、言葉を続けた。

「あ、司はそういう事はありませんでしたよ。司は本当にきちんと守られて育ったので」
「本当は一緒に狙われたのだと思いますが、私の運が悪かったんでしょうね。司はその時留守にしていまして」
「瀬名さんは覚えていらっしゃいますか?ご自分が何をされたか」

 忘れる訳がない。が、丁寧に心の底に封じ込めていた記憶だった。思い出してしまった。

 気分が、悪い。顔に出ていたのか、彼女は少し眉を下げて言った。

「…申し訳ございませんでした、口に出すべき話題ではありませんでしたね」
「ただ、周りに話せる方がいなかったので、つい」

 まあ、当たり前なのですけれど。
再び彼女の顔を見ると、すでに元の微笑にもどっていた。

「なんであんた、そんなに平気なの」

 喉から出た声は力ないものだった。

「どうしてでしょうね」

 小首を傾げた彼女の赤い髪が、細い肩をするりと滑っていった。
 触れてしまえばきっと、自分と同じ、淀んだ記憶が溢れるのだろうと漠然と思った。


151228
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