(≠転校生 ※捏造過多 これの続き)


 私が瀬名先輩に取り付けた約束は今日だった。
 名前は夕食の時間の直前になって帰ってきた。予定よりも少し遅かったので何かあったのかと心配したが、どうやら話が弾んだだけのようだった。食事の間も、普段通りの様子に見えた。

 食事の後、名前は私にこう耳打ちした。

「お兄さまのお部屋にお邪魔してもよろしいですか?」

 私は頷いて、共に部屋に下がった。



 名前は私の部屋に入り、ベッドに腰を下ろした。私も隣に座る。

「どうでしたか、瀬名先輩とのdateは」
「とても楽しかったですよ、またお会いしたいです」

 門限がなければだなんて思ったのははじめて。
 名前はそう言って微笑んだ。私と同じ顔、同じ口角、同じほほえみ。

「司」

 するりと両手をのばされる。私の手はそれぞれ名前に包み込まれた。

「『お姉さま』のお話も聞きましたよ」

 私の顔はきっと一瞬にして蒼白になっただろう。私の反応に気を良くしたのか、さらに笑みを深めて名前は言った。

「ねえ司お兄さま、私は『気にしなくても良い』とは言ったけれど、『忘れて良い』と言った覚えはありませんよ」
 わずかに震えた私の手を、名前はきゅっと握りなおした。

「も、申し訳ございません、名前お姉さま、私、」
「お兄さま、私謝罪が欲しいわけではないのよ。そんなお顔をなさらないで。ただ、とても哀しくて」

 名前は指を私のものと絡める。少し手の甲の側に指を曲げられた。痛い。

「ねえお兄さま、今日は一緒にお風呂に入りましょう。一緒に寝ましょう。私の寝間着をお貸しします。私もお兄さまのを着るわ。だって、ねえ、私たちは双子なのよ」

 忘れてはいけないわ。

「私にはお兄さましかいないのです」

 名前の言葉は私の脳をいつも溶かす。
 ええ私も、私にも名前お姉さましかいませんよ。たったひとりの愛しいひと。
 私のせいで、お姉さまはお姉さまでなくなってしまったのですから。


160222
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