尊くんと約束してしまったので今更引けないけれど、やはり気が重い。目的の地に近づくにつれその気持ちは大きくなった。
でも足は、体はきちんと動かす。プロですのでね。一応それなりの評価は頂いているのでね。ただ集団行動が苦手なのでちゃんとした役職にはついてないけれど。人望ないとか友達いないとかそういう訳ではなくて。私には尊くんがいます。
学園は外観からは、あの頃となんら変わりのないように見えた。
どっしりとした門、を通って入るのは避けたい。誰にも会わないで、最短で組頭を回収するのが私の忍務。さっき決めた。パッと行ってバッと帰ってくればいいだけのこと。私ならできる。
そういえば組頭はどこにいるんだろうか。しまった、そこのところちゃんと聞いてくればよかった。甘味に突き動かされてここまで来たので、もとより計画性なんてなかったのだけれど。
とりあえず手当たり次第に探してみようか。まったく手のかかる上司である。そう思って塀を越え、敷地内に降りようとしたときだった。
「そこの人ーーー!!!」
「うわっごめんなさい」
見つかった。パッと行ったらバッと見つかった。早すぎやしませんか。やばい怒られる、私真面目だからめったに怒られたりしないんですよ耐性ないんですよごめんなさい!塀に中途半端に乗っかったまま、恐る恐る声のした方を見ると、箒を持った男の子。怒っている。胸に事務、とあった。若い事務員なんていつの間に雇ったんだろう。
「違うんです人を探してるんです!決して不審者では」
不審者とかいつかの組頭みたいだな、とか自分で思って凹む。
「あれ、そうなんですかあ?」
事務員さんはさっきの強い語気から一転、ゆるい雰囲気に変わった。あれ、同一人物か?
「ご用があるなら入門表にサインをお願いします〜」
そう言って筆と墨と入門表らしきものを差し出してくる。記録を残すなんて考えていた中で一番やりたくないことだったけど、この人さっきまで飛びかかってきそうだったし、素直に従っておこう。
…組頭も普通にサインしてるし。達筆なのがまた…。
「名前さんて言うんですねえ。あ、僕は小松田秀作といいます」
「はあ、どうも」
名前を書き終え入門表を返すと、彼は自己紹介をしてきた。私は早く立ち去りたい。けどもいい人そうなのでそうもいかない。この学園は基本的にやさしい人が多い、だからこそ私には少し、疲れる。名を明かしてしまったし、当初の誰にも知られずに忍務を遂行するという予定は変わってしまったので、とりあえず彼に組頭の事を聞いてみた。
「あの、怪しい人見ませんでした?」
「怪しい人ですか?」
「包帯ぐるぐるの」
「ああ雑渡さんですかあ?」
組頭って知名度高いんだなあ。まあそりゃそうか、目立つし強いし目立つもんな。
「その人を探していて。どこに居るかとか、わかりますかね…」
「うーん、大体医務室に居ますかね〜」
ーーーー医務室。
またなんで、私の行きたくない場所に居るんだか。しかも大体って。
「…ありがとうございました」
いいえ〜と返す彼に取り繕った笑みを浮かべ、そこに向かった。
160307
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斜掛