図書委員の当番は出席率が悪い。特に私の担当する日のメンバーは一度も揃った事がない。旧校舎のすみにあるここは利用者が限りなく少ないので、仕事も人手はいらないし、放課後はみな何かしらの用事で忙しいのだろう。
 かといって毎回私だけってのはどういう事だ。嫌われてるのか私。でもほかの人は全員先輩だから面識はない。気のせいだ、多分。
 年上、そもそも知らない人に注意できる度胸も気力も持ち合わせていないので、私は今日も司書のおばさんと2人きりだ。といっても司書さんも仕事があったりで他の部屋にいる事が多いので、大抵はひとりさびしく本を読む。
 あ、でも今日は違う。久しぶりのお客がいた。しかも結構長居している。男子というのも珍しい。彼の髪の毛が、窓からの陽光に照らされて柔く光った。



「貸出お願いします」

 本から目を上げると、さっきの男子だった。いや他にはだれもいないんだけど。
 遠くからではよく分からなかったが、きれいな顔をしていた。まっすぐな視線が痛い。力の強いまなざしだった。

「あ、はい。失礼ですがクラスと名前は」
「……1年1組伊賀崎孫兵です」

 いがさき。まごへい。なんかどっかで聞いたことあるな。
 1組の貸出カードの棚を探す。ちなみにうちの学校は未だにカード制だ。これも人気がない原因なのではと私は思っている。

「はい、貸出期間は二週間です」
「ありがとう」

 ドアへと向かう背中を見送った後、ふいに思い出した。

「…かの有名なイケメン爬虫類オタクか」

 残念なイケメンとか言われてたな。彼が借りていったのは、ばかでかい図鑑だった。持って帰るの大変だろうに。でも自分で買うのは高いもんなあ。
 そういえば廃棄になった古い図鑑があった。司書さんに話して、彼に譲ろうか。 おせっかいだろうか。
 でも彼とちゃんとしゃべってみたいと、ぼんやり思った。あのまなざしに既視感を覚えたのはきっと気のせい。

つづかない
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斜掛