(現パロ転生 一人称改変)
生まれ直したっていい事なんかなかった。昔の記憶が邪魔をして心は憂鬱になるし、未だにあまりこの時代に馴染めていない事はそれなりにストレスとして日々溜まっていく。だから、転校初日、入った教室の教卓目の前の机に三木が座っていたときはめちゃくちゃに嬉しかった。でもそれと同時にひどく動揺した。思わず小さく名前を呼んでしまったほどに。
「三木」
「…………は?」
「あ、え」
「……なんで僕の名前を知ってるんだ?」
そこからはもうよく覚えていない。ただ気付いたら裏庭らしきところに迷い込んでいたから、教室を飛び出してきてしまったことは分かった。最悪だ。今まで、転校する度いくら趣味が合わなくたってちゃんと友達はつくって、明るくふるまって、穏便に過ごしてきていたのに。きっと今ごろ皆にくすくす笑われているんだろう。三木も、きっと一緒に。
「(なぜ知っているかって)」
じゃあ反対になんであんたは覚えてないわけ。それでなんで私ばっかり記憶を持って生きているわけ。もうだめだ、頬はすでに濡れていた。しゃがみこんで、足元の揺らぐ視界の中の雑草を呆然と見ていたら、背後で砂利を踏む音がして身を硬くした。
「…おい」
ほんとうに、声もその明るい目もなんにも変わっていないのに。反応しない私に、三木の足音はためらいがちにこちらへ近づいてきた。きっとひどい顔だろうからなかなか上げられない。
「あー…あの、ごめん」
「…よく分かってないのに謝らないでよ」
三木が言葉に詰まったのが分かった。それでも彼は私の横にしゃがんで、視線を合わそうとしてくる。
「…とりあえず、一回顔上げろよ」
「嫌だ」
優しいのだ、三木は変わらず、ずっと。先ほどの私の勝手な思い込みを恥じた。
「なあって…話してくれないと分からないだろ」
痺れを切らした三木が私の腕をつかむ。思わず反射的に顔を上げると、いつだかに見た真剣な顔があって、収まりかけていた涙がまた溢れてきた。
「ゆっくりでいいから、話してみろよ」
悔しい。その顔でああ私にのたまったくせに。
「…あんたが」
「うん」
「あんたが、来世でも忘れないって言ったんでしょうが!!!!」
思わず握った拳はきれいに三木の左頬に決まり、気持ちよく吹っ飛んでいった。
やらかした。
もう完全に嫌われた。
最低だ、私。
冷えていく体温を感じながらも、少しだけ残るまともな思考で、倒れた三木によろよろと駆け寄った。
「ご、ごめん…! 大丈夫、じゃないよね痛いところは…そりゃあるよねああもう」
「……名前」
「…………は?」
頬を押さえながらぽかんとこちらを見る三木を、こちらも負けじと間抜けな面で見つめる。
しばらくそうしていたが、ふいに三木が吹き出した。
「っはは」
「な、に」
「あははっ、だってお前、怪力、っふは!!」
「三木」
「相変わらずだな、名前」
体を起こした三木に抱きついたので、彼はまた地面に背中を打ち付けることになってしまった。
「三木ヱ門の大馬鹿野郎」
「…すまなかった」
「火器オタ」
「怪力女」
「うるさい」
「でもそのおかげだな、お前とまたちゃんと会えたのは」
またぶわりと涙があふれる。彼の肩口に押し付けていた私の頭をやんわりとはがして、三木は体を起こした。
「ひどい顔だなあ」
笑う三木にうるさい、と反論しようとしたら、そのまま近づいてきた唇のせいで出来なかった。私のさっきのグーパンで、三木の口は少し血がにじんでいた。
「…鉄の味がする」
「懐かしいだろう?」
「…まあね」
どちらからともなくまた笑いあって、しあわせで、やっぱり涙はなかなか途切れなかった。
「参ったな、いつからそんなに泣き虫になったんだよ」
「あんたのせいだ」
三木は少しだけ笑って、私の頬を指先でぬぐった後抱きしめた。三木の腕に、彼にまた会うために生まれ直したんだと、そんな恥ずかしいことを本気で思った。
◇記憶のない転生三木を物理で解決
リクエストありがとうございました!
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斜掛