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 影山に負けてからというもの、自分の無力さを思い知らされてばかりだ。今まで散々僕を取りまいていたクラスメイトも、めったに話しかけて来なくなった。ひとりを除いて。

「あっはテルくん何その髪型!!」
「…名前ちゃん?」

 僕が登校してくるなり妙に静かになった教室。ひそひそと、しかし遠慮なく話される言葉たち。居心地の悪さを感じながらも無視をして席に座った僕に、彼女は爆笑しながら隣の机にもたれて話しかけてきた。
 幼馴染の名前ちゃんは今まで僕と喋るのを避けているように見えた。実際中学に入ってからはほとんど口もきいていなかった。思いがけず同じ学校になって、浮かれていた日がもはや懐かしい。今年クラスメイトになってからもそれは変わらなかったというのに、なぜ今になって。

「…変かな」
「うん」

 ばっさりと言われて、少しだけ心臓が鈍く重くなった気がした。

「でも、前のより全然好き」

 けれど彼女がそう言って笑うから、電流がぴりぴりと伝わるように、指先から体が熱くなった。おもしろいから、と続けられた言葉は気にしないでおく。まっすぐ彼女の顔を見上げるのが気恥ずかしくて、自分の机に置いたカバンに目を落としながら喋った。

「…あのさ、何でいきなり話しかけてくれたの」
「え? だってテルくんいっつも人に囲まれてるから…話したくてもなかなか話せなかっただけだよ」

 …なんだ。距離を感じていたのは僕のせいで、勝手な思い込みだったのか。格好つけて勉強もスポーツも超能力で目立とうとしたのは、まったくの逆効果だったのか。そうか…

「僕も」

 僕も話したかったよ、と呟くように言うと、彼女は「ほんとう?」と笑いかけた。

「ねえ、僕は超能力者なんだけど」

 そう言うと、彼女は一拍置いた後、さっきよりも大きな声をあげて笑い出した。

「て、テルくんいつからそんな冗談言えるようになったの…!」

 あはははと目尻に涙まで浮かべる。そんな顔、見たのはいつぶりだろう。

「テルくん、なんか変わったねえ」

 ひとしきり笑ってから彼女はそう言った。

「変われるかな、僕」
「え?」
「…なんでもないよ」

 担任が教室に入ってきて、名前ちゃんは自分の席に帰っていった。

「またね」

 いつか、僕が自信を持てるようになったら、この力を彼女に見せようか。驚く彼女に期待をして、先生の話を聞きながらも、予習をしたノートを取り出して眺めた。


160824
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