(現パロ)
文化祭は好きだ。授業は潰れるし、皆で一丸となって何かやるのは楽しい。これからおそらく一生話す事はないであろう人と事務的な会話をするのも、当日食品を食べ歩いて無駄にお金を費うのも。
「えっと次決める事は…女装コンテスト出てくれる人ー!」
学級委員が黒板の前で呼びかける。そう言われてはい、と言い出す人もあまりいない企画だと思うけれど。
「田村くんがいいなー」
「あー私も思う!」
「ぜったいかわいいよね!」
おお、人気者だなあ田村。そういえば結構女顔だ。「お前1位とれよー」「ドンマイ田村!」男子からも声がかかる。教室の後ろを振り向くと、想定していなかったのか、わたわたしているのが見えた。目立つの、好きじゃなかったっけ。
「お願いしてもいいかな、田村くん」
「あ、あぁ…他にやる人がいないなら…」
キャーーと歓声、野次、様々な声が上がる。
「衣装とかメイクとかどうする?」
「あ、私たちが手伝おっか?」
「ああ、えっと、……姉に頼もうかな」
田村の視線が一瞬だけ私に向き、すぐ逸らされた。なに、その苦笑い。
「誰が姉だよ」
「すまない名字!」
「何で私が田村の女装手伝わなきゃいけないの」
「うわっでかい声出すな語弊が」
「事実じゃん」
「うっ…」
田村とまともに喋るのは久々だった。それがこんな会話でいいのだろうか。
中学一年、二年と同じクラスで同じ委員会で、仲もそれなりに良かったのだけど、三年生になってどちらも一緒になることはなかった。高校だって、私は直前に志望を変えたから、まさか田村も居るとは思わず。
同じ教室でも彼との会話はほぼゼロで、ついでに委員も違って、本当にクラスメイトでしかなくなってしまった。
目だけはたまに合ってしまうのが、とても気まずかったのだけど。
なのにこうもあっさり、普通に話せてしまっている。拍子抜けだ。ああでもよかった、話したいのは私だけではなかった。たぶん。
誰かに見られたら仲を誤解されそうだが、このHRが終わってから時間の経った、微妙な時間に下校する人はいないので大丈夫だろう。周りの皆は私たちが同中だということを知らない。
「で、何で私なの」
話せて嬉しいけれど、正直得意なことではないのであんまり引き受けたくはなかった。私だって別に、化粧とか流行の服とか、詳しい訳じゃないし。
私のことばにうなだれる田村。つむじがこちらを向く。
「クラスの女子は緊張するから…」
「つまり私は女子ではないと」
「ちが、そうじゃなくて」
私のこと、頼ってくれたのは素直に喜びたいけど。
「まあいいよ、元がいいから楽そう」
私がそう言うと田村はほっとした表情になった。
「よし、私の家で作戦会議しよう」
想定外だったのか「えっ」と呟かれる。通学路には金木犀が香り初めていた。
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斜掛