綾部くんと初めて会ったのは入学してすぐのことで、大学構内の廊下ですれ違った時だった。
「せんぱ、い」
初対面の同級生(おそらく)をそう呼んで、しかも涙を流して、こちらを見つめたまま動かない、ひとことで言えば変な人だった。けれども綺麗に泣く、綺麗な人だった。
差し出したハンカチにも気付かない様なので、滑らかそうなその頬に押し当てる。するとびくっと肩を震わせたあと、整った顔を歪めて、その場にへたり込んで、子供みたいに嗚咽を上げだした。私がおろおろと取り敢えず肩を叩くと、きつく、痛い位に抱きしめられる。
人が、何事かと集まりだして、遠巻きにこちらを見ていた。恥ずかしくて今すぐ逃げ出したいが、この人は泣き止む気配がない。腕の力もさらに強まった気がする。どうしたものかと取り敢えず背中をさすっていると、よく通る声が聞こえた。
「喜八郎お前何やって…
………先輩!!??」
私、浪人生じゃないんだけどなあ。
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斜掛