(現パロ)
滲む暑さに目が覚めた。張り付いた髪が煩わしい。壁の時計は5時を指していて、カーテンの向こうは既に明るくなってきていた。
二度寝するのも何だか憚れて、朝焼けでも見ようかと窓に寄ろうとしたが、横から静かな朝に似つかわしくない音が聞こえてそちらに目を向けた。
口は間抜けに半開きで、いびきを気持ちよくかいている文次郎が寝ている。昨日も彼は遅かった、いつの間にか帰っていたようだ。目の下の隈は昔からのものだからどうしようもないが、やはり疲れているように見える。そっとしておいてやろうとも思ったけれど、気持ちの良い朝にこれがBGMはない。うるさいし。
引っ叩いて起こそうとも思ったが、それもそれで面倒な気がする。気道を確保すれば大抵静かになるってテレビか何かで見たような。体勢を変えてやればいいらしいのだが仰向けの文次郎を転がすのはそれなりに大変だ。そういえば、伊作に前教わった、応急手当の手順に気道確保があった。一人一人こういうことが出来るともしもの時助かりやすくなるとかなんとか。文次郎で練習しておこうかな。
ぐいと彼の顎を持ち上げると、部屋は再び朝の静けさに包まれた。
問題はたやすく解決したのだけれど、
文次郎の、汗が伝う太い首の、
喉仏がやけに目立って見えたので、
ぐ、
両手を彼の首に添え、軽く圧をかける。
ぐぐ、ぐ
「うわ、全然締絞まんない」
てのひらからどくどくと脈を感じる。高まる私の鼓動とは裏腹に自分の体温がどんどん下がってくような錯覚に陥いった。
ぐぐ、
胸の上に乗って体重をかける。
ぐ、ぐぐぐ、ぐぐ
「っぐあ」
げほげほごほ、派手に咳き込む文次郎。やっと起きたね。
「おはよう」
「…っおっ前何やってんだバカタレ!!?!!」
「うーん…?」
一気に覚醒してまくし立てるうるさい口を塞いだ。乾燥した口内を舌先で軽く撫でて、口を離す。
「…人工呼吸」
赤くなってその後すぐげんなりした文次郎。お前は昔からよく分からん、溜息と共に呟かれた。うん、私もそう思うよ。
私のお蔭で目が覚めたのか上体を起こそうとする彼から退く。
「ねえ文次郎」
「…なんだ」
海、行こうか。
青い車/スピッツ
150731
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斜掛