「今日から此処がキミのお家だよ」
ゴミと煙と熱の中から連れ出され、警察病院で眠りに就いたとと思ったら。
いつの間にか私は真っ白な部屋の中に入れらていた。
一体どうしてこうなった。
「あ、の…」
「うん?」
「ここは?おかあさんは、どこですか?」
「此処にはいないよ。大丈夫。イイ子にしていたらお母さんに会わせてあげるよ」
質問しなければよかった。
漫画や小説で何回も見たパターンですね。演技力でも磨けってかふざけんな。
「わかりました」
従順な子供のふりをしながら室内を観察する。
プライバシーの欠片の無い前面がガラス張りの部屋。
食事は、一つしかない出入口に作られた小窓から差し入れられるようだ。
今の自分はまるで、ペットショップで陳列されてる動物だ。もしくは檻の中の猛獣。
男性は沈黙を保ったままだ。
「今日からヨロシクオネガイシマス」
握手を求めると握り返されるが、それもパッと離された。
粟立つ肌が目に入ったが指摘はしないでおいておこう。
「これから何をすればいいですか?」
「…」
「あの?」
(能力の制御とか教えてはくれないのだろうか)
「君にはまず健康診断を受けてもらう。検査後、状態を見てから対応…何をするのか決めるから。それまでゆっくり休んでね」
「でも、警察の病院でもしました。検査結果は貰ってないんですか?」
虐待されていたせいでこの身体は骨と皮。健康状態なんて、良好から程遠い絶不調なのは分かっている。
そのため警察病院での検査中、憐れみと好奇心を合わせた視線が自分から離れなかった。
「此処ではどんな検査をするんですか?期間は?いつになったらお外に出れますか?」
満夜は子供らしく聞いてみたが、彼女の言葉にイラついたのか子供が嫌いなのか。
目の前の笑顔が歪む。男性の上っ面の皮から本性を剥き出しにした。
「此処はとある大企業の研究施設だ。君には開発中の新薬を投与し、経過を観察する。ようは実験用モルモットさ。人体に鳥類の部位を発現させるなんて…素晴らしい!君一人で様々な薬の治験ができるッ!!」
(あぁ。だから白衣着てるんだ)
彼女の肩を握り、熱を込めて自分の研究にまで語りだした男性。
監視カメラには虐待された少女に同情する善良な医者に映っているのだろうか?
この男が見ているのは、羽間満夜ではなく、薬の利益と収入。名声といったところだろう。
いや、こんな大規模な実験施設だ。この所業には他に加担する人間がいるのだろう。
満夜を守ってくれる守護霊の能力を利用し、非合法な実験を行おうと計画していること。
そして、誰も自分を助けに来ないことを。
中身と肉体が伴わない成長をしている満夜は正しく理解した。してしまった。
(自分の健康状態が【良くなってしまった】ら…)
新たな地獄が口を開いて待っていることに身体が震える。
これから起きる人道を蔑ろにする所業に恐怖した彼女は、現実から目を逸らすように俯いた。