プロローグ
それは、後頭部と枕が一体化しそうなくらい疲れている夜に来た。
「…もしもし」
『久しぶり満夜!元気にしてた?』
「ぼちぼちかな」
『相変わらずだね〜』
枕元の携帯がけたたましく鳴る。
出ると大学生の親友で、私はベッドの上で体を起こした。
「それよりどうかした?いつもはメールなのに」
『あのさっ!今度卒論書くのにイタリア行くんだけど、一緒に来ない?観光しようよ!』
「えぇ!?」
突然の申し出に私は思わず大声を上げた。
「私パスポート持って無いよ?イタリア語も分かんないし。あと、給料日前だしカツカツ」
ちなみに今は2DKに住み契約社員と内職でなんとか生活している。
『大丈夫大丈夫!お金はこっちで持つよ!チケットも当てがあるし』
「そうなの?この金持ちめ!でも食費は割り勘ね」
『満夜はそういうところ謙虚よね…まぁもっと褒め称えてもいいよ!』
「へーへー。ありがたや〜」
『つーか』
「つーか?」
『実際に見ないと』
『「リアリティが出ない」』
「でしょ?」
『ああ!さすが満夜、よく分かってる!』
杜王町に住んでいる彼女…辻渚沙は私の
守護霊を知っても理解し、仲良くしてくれている。
いつにもまして突飛なお願いだけど。
「分かったよ。ちなみにいつ頃行くの?」
『来週の水曜日から一週間!そしてそのままイタ〜リアァ〜!』
「はーい、用意しておくね」
『あ!あと、露伴先生が資料の写真の件で満夜にお礼がしたいって言ってたからさ。先生の家にも寄るけど』
「行きます」
『即答!ウケる!』
ファンだもんねと笑う親友との会話を終え、電話を切る。
(S市にも行くのか。単発でバイト入れるかな…)
こうして波乱の海外旅行が幕を開けるのだった。
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